研究概要 |
1、成果の具体的内容 24年度は金ナノ粒子層/SiO2誘電体ナノコラム層/SiO2層/銀鏡面層を持つ局所プラズモン共振器の(1)伝熱特性と光-熱変換特性の関係,および(2)光-熱変換を利用した流体駆動に関する研究を行った.実験(1)では,ナノコラム層の空孔率と,局所プラズモン共振器自体を支持する基板側と流体側との熱伝導率の差が光音響放出強度に強く影響することを示した.そして局所プラズモン共振器が局所温度の時間的変調に有利であることを実験的理論的に明らかにした.この結果はOPTICS EXPRESSで論文として発表している.実験(2)では,局所プラズモン共振器の発熱を用いて実際に流体・粒子駆動を試みた.結果,局所プラズモン共振器を用いた流体加熱により肉眼で観察できるほどの粒子の移動を観察することに成功した.観察された粒子駆動の一つは,レーザー照射位置に対流によってトラップされた粒子がレーザー照射位置移動によって輸送されたものであると考えられる. 2、意義 実験(1)における試料の発熱と周囲流体への伝熱特性の評価は,今後温度変調による流体駆動を実現・解析するために必要である.また実験(2)は局所プラズモン共振器の光熱変換を用いた流体駆動が実現可能であることを示し,25年度以降の研究へつながる大きな一歩となった. 3、重要性 これまで温度勾配を利用したマイクロ流体駆動は理論的にはその有用性が示されてきたものの,従来技術ではフレキシブルなマイクロ流体の加熱が難しいため実現されていなかった.しかし本研究では局所プラズモン共振器を用いて局所温度を強く変調できることを明らかにし,熱によるマイクロ流体駆動の実現可能性を示したという点で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の計画では,ナノ構造体の伝熱特性と光一熱変換特性の関係,および光-熱変換を利用した流体駆動に関する研究を行う予定であった.現在までに成果欄記載実験(1)から局所プラズモン共振器で発生した熱の時間的な伝達挙動を明らかにし,高速な局所温度変調の可能性を示した.さらに実験(2)から熱による流体駆動を実際に示すことが出来た.そのため,24年度は研究の計画を計画通り実行出来たと言える.
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今後の研究の推進方策 |
24年度の結果を受けて次年度は以下の2点に重点を置く.一つは新しい粒子駆動実験系の構築である.これまでに流体駆動観察に使用していたシリコーンで作製した流路は,局所プラズモン共振器の異方性コラム構造に対して非常に厚い.そのため薄膜近傍の流れを観察するのが難しいという問題があった.これをうけて次年度はナノコラム構造と同じスケールの流路をPDMSで作製し,薄膜近傍の流体流れを粒子によって可視化する.またもう一つは,高速な温度変調を用いた特異流れの観察である.これまでの研究で局所プラズモン共振器は局所温度の高速な温度変調が可能であることが示された.そこで,これによって実現される複雑な温度場と流れの関係を明らかにする.
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