研究課題/領域番号 |
12J02363
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
池田 愛 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 酸化物高温超伝導体 / 平面四配立構造 / ニッケル酸化物 |
研究概要 |
今年度は、前年度に引き続き、銅を含まない平面四配位ニッケル酸化物LaNiO_2の超伝導化の試みを継続した。平面四配位銅酸化物においても、不純物頂点酸素が占有すると、低温で抵抗率が上昇する"アップターン"が現れ、超伝導にならない。LaNiO_2は、これまでの研究(我々のグループを含めて)では半導体的な抵抗率の温度依存性を示すことが報告されている。LaNiO_2に対しても、低温での抵抗率の上昇が抑制される還元方法を検討することが必要であると考え、種々の還元方法でLaNiO_2の合成を試みた。これまで、金属や炭素を用いた固相反応法では、試料全体にわたる均一な酸素の拡散が起こりにくいため、LaNiO_2は得られていない。低温での抵抗率の上昇が抑制されたLaNiO_2薄膜が得られた方法は、CaH_2やTiH_2などの金属水素化物の熱分解反応により発生する水素を利用した還元である。CaH_2還元・TiH_2還元・水素還元により得られたLaNiO_2薄膜の抵抗率の温度依存性を比較すると、水素還元膜に比べ、CaH_2還元膜とTiH_2還元膜は低温まで金属伝導が現れ、低温での抵抗率の上昇が抑制されている(抵抗率極小の温度は水素還元膜で270℃、CaH_2還元膜で70℃、TiH_2還元膜110℃である)。水素化物を用いた還元では、ボンベのガスを用いた水素還元よりも、混入する酸素や水が低減し、低温でより効率良い還元ができる。低温プロセスが、トポタクティック変換過程で起こる不規則な酸素抜けの抑制につながっていると考えられる。さらに導電性の高いLaNiO_2薄膜を得るためにはCaH_2より低温で水素を発生することができる還元剤の探索が必要であることが示唆される。候補としては、CaH_2より熱分解温度の低いNaHが挙げられる。一方で、650℃以上の高温CaH_2還元膜は膜表面にCaOが残ることから、Caによる強力な還元反応が起こっていることが示唆される。この時、還元後のLaNiO_3/NGO膜およびNiO/NGO膜は約7Kで超伝導転移と思われる抵抗の落ちを観測した。超伝導相の詳細についてはまだわかっていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は室温近傍でわずかにLaNiO_2の金属伝導を確認することに成功したが、今年度は約70Kまで金属伝導を観測し、ほぼLaNiO_2がバンド金属であることを明らかにしたから。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)LaNiO_3のNaH還元を試みる。これまでCaH_2やTiH_2の金属水素化物を用いてLaNiO_2を作製し、どちらも約70Kまで金属伝導を観測している。この方法では、金属水素化物の熱分解反応により発生した水素による還元反応が進行していると考えられる。高温水素中ではLaNiO_2は分解する為、より低温で熱分解が起こる金属水素化物の選択が必要である。そこで、CaH_2やTiH_2よりも低温で熱分解するNaHを用いた還元を行う。 (2)分子線エピタキシー法を用いて電子ドーピングしたLa_(1-x)Ce_xNiO_3薄膜を作製、それをトポタクティック還元することによってLa_(1-x)Ce_xNiO_2薄膜を作製する。電子ドーピングは静電的にLaNiO_2の正規酸素を保持する役割を果たす。
|