研究概要 |
私は、複数の不斉中心を一挙に構築する新規連続反応の開拓を目指している。今年度は、これまで私が見出した連続反応によるγ-アミノアルコール合成法を拡張し、1,3-ジアミン合成へと展開した。なお、γ-アミノアルコールでは困難であった不斉触媒化も達成することができたので以下に述べる。 1,3-ジアミンは、有機化学において不斉配位子として用いられている。また、医薬品等の生物活性物質にも多く見られる構造であるため、その立体選択的な合成手法の開発は重要な研究テーマのひとつである。そこで、私はこれまで得られていた知見を基に、イミン、エナミンおよびトリクロロシランから炭素-炭素結合形成反応とそれに続く分子内還元反応により1,3-ジアミンが合成できないかと考えた。 種々イミンを検討したところ、準トシルイミンを用いた際に良好な収率、高いジアステレオ選択性で1,3-ジアミンが得られることが分かった。しかし、いずれの不斉触媒を用いて反応を行ってもエナンチオ選択性は発現しなかった。 アルデヒドを用いたγ-アミノアルコール合成においては中程度ながらエナンチオ選択性が発現していたのに対し、舟トシルイミンを用いた1,3-ジアミンではエナンチオ選択性が発現しないという結果となった。 この違いは、ケイ素-Lewis塩基触媒錯体のアルデヒドもしくはイミンへの配位形式の違いではないかと考え、アルデヒドの場合と同様の配位が可能である環状のイミンを適用することとした。その結果、反応は良好に進行し期待した通りエナンチオ選択性が発現した。現在、反応条件の最適化を行った結果、90%eeを超える高いエナンチオ選択性で1,3-ジアミンを得る手法を見出している。
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