研究課題/領域番号 |
12J02386
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高藤 義正 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | PEG脂質 / 間葉系幹細胞 / ICAM-1 / シクロデキストリン |
研究概要 |
本研究では、炎症部位認識リガンドを導入したPEG脂質をヒト間葉系幹細胞(hMSC)表面に修飾することでhMSCの炎症組織への接着を促し、治療効果を向上することを目指している。 初年度は、リガンド修飾hMSCのin vitro評価を行うために、(1)PEG脂質修飾条件の最適化、(2)修飾効率向上のための添加剤の探索と評価、(3)PEG脂質修飾hMSCの接着性評価に取り組んだ。 (1)PEG脂質修飾量を評価するため、PEG-distearoyl phosphatidyl ethamlamine(DSPE)に蛍光分子であるFluoresceinを導入したF-PEG-DSPEを合成した。次に様々な条件下でF-PEG-DSPEを修飾したhMSCの細胞膜表面の蛍光強度を測定し、温度、PEG脂質濃度、修飾時間の3つの因子が修飾量に大きく影響することを明らかにした。また、修飾されたPEG脂質の細胞膜上での安定性の確認を試み、37℃の血清含有培地中で8時間転倒混和したのちも約50%のPEG脂質が細胞膜表面に残存していることを明らかにした。 (2)PEG脂質の修飾効率を顕著に向上させる添加剤としてシクロデキストリン(CD)を見出した。特にαCD添加群(10mM)では、未添加群と比較してPEG脂質修飾量が約80倍まで向上した。これはhMSC表面へのPEG脂質の修飾量の制御を容易にするという点で非常に有用である。 (3)炎症関連接着分子を高発現させたヒト肝類洞血管内皮細胞(hLS柵)に対するPEG脂質修飾hMSCの接着能の評価を試みた。量子ドットによる蛍光標識hMSCを、hLSMEがコンフレントになった培養皿上に添加し、所定時間培養後、接着hMSCと接着hLSMEの細胞数の比からhLSMEに対するhMSCの接着率を算出した。リガンド未導入PEG脂質を用い、異なるPEG鎖長およびPEG脂質修飾量で修飾を行ったhMSCに対して本評価を行ったところ、PEG鎖長が長く、PEG脂質修飾量が増大するほどhMSCの接着性が低下することが確認された。また、来年度実施予定であるhMSC表面へのリガンド修飾について、hMSCの炎症組織への接着を促進するために炎症関連接着分子であるICAM-1を特異的に認識するペプチドをリガンドとして選定し、同ペプチドの合成、精製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で予定していたPEG脂質修飾条件の最適化については、修飾量に影響を及ぼす因子を特定し、さらに修飾されたPEG脂質の安定性の評価も実施した。修飾効率を向上できる添加剤の探索については、修飾量を顕著に向上するシクロデキストリンを見出した。PEG脂質修飾hMSCの接着性評価については、PEG鎖がhMSCの接着能を低下させることが見出され、修飾に用いるPEG脂質の最適化の必要性が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
PEG脂質は、PEG分子量および修飾量依存的に被修飾細胞の接着能を低下させることが明らかとなったため、今後は短鎖PEG脂質の合成に取り組み、接着能に対する影響を明らかにする。同時にICAM-1認識ペプチドを導入したPEG脂質を合成し、PEG脂質を介してICAM-1認識ペプチドを修飾したhMSCの、炎症関連分子を高発現させたヒト肝類洞内皮細胞に対する接着能の評価を行う。
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