本年度は「遷音速・高迎角に適する新たな壁干渉補正法の開発」というテーマの第一段階として、既存の壁干渉補正法がどの程度の精度を示し、どのような改良が必要なのか検証を行った。既存の壁干渉補正法は主に線形化されたポテンシャル方程式を基にしたものであり、1980年代に提案されてから現在まで広く使われてきた。ただし、補正によって得られる値が、実際に風洞壁がない場合の結果と一致しているかを実験的に確かめることができず、これまでその精度を厳密に検証することができていなかった。そこで、本研究ではCFD(Computational Fluid Dynamics)と新たに開発した多孔壁モデルを用いることによって風洞壁有り・無しの場合の流れを精度よく解析し、その比較から既存の壁干渉補正法の検証を行った。本検証では特に既存の壁干渉補正法で精度が疑問視されている遷音速・高迎角の流れ場に特に着目して検証を行っている。本検証の対象は現在非常に広く用いられているMokryの壁干渉であり、流れ場は NACAOO12二次元翼の流れ場を用いている。本検証の結果をまとめると以下のようになる。 ・失速を起こしていない亜音速の流れ場では、抗力係数1[count]程度の非常に高い補正精度を示す。この精度は供試体が大きく壁の影響が非常に大きい場合でも同様である。 ・遷音速の流れ場では抗力係数10[count]程度に補正精度が低下する。また補正精度の低下によって、衝撃波位置に誤差が生じる。 ・失速点以上の迎角では、抗力係数100[count]と大きな誤差を示し、このような流れ場での使用は適切ではない。
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