昨年度まで、数値解析と風洞壁を模擬することのできる多孔壁モデルを用いて、比較的現象が単純な二次元翼・三次元翼の風洞試験を再現する流れ場の数値解析を行い、壁干渉の現象を明らかにしてきた。しかし、これまで対象としてきた、二次元翼・三次元翼の風洞試験は、ブロッケージ比が航空機の試験に比べて非常に大きく、壁干渉の定量的な値は航空機の場合とは乖離があることが予想される。よって、本年度は、旅客機の標準模型であるNASA-CRMの風洞試験を対象に改めて解析を行い、一般的な航空機の風洞試験に即した条件における壁干渉の定量的な値を示すことを目的とした。解析の結果、以下の様な成果を得た。 1.壁有りと壁無しの流れ場の比較から揚力と抗力への影響を調査した。多孔壁による干渉は二次元翼・三次元翼の場合と同様に、揚力を下げ、抗力を上げる方向に働いた。しかし、その干渉量は二次元翼・三次元翼の場合と比べて小さく、最大で3%程度の影響を揚力・抗力係数に与える。 2.航空機の風洞試験を対象に、線形ポテンシャル方程式を基礎とした壁干渉補正法の精度検証を行った。航空機の風洞試験において標準的な条件下ではその精度は高く、CDで1count程度の補正が可能である。 3.多孔壁による壁干渉が様々な流れ場の条件(マッハ数、迎角、模型サイズ)に対してどの様な干渉量を示すのかパラメトリックスタディを行い、その分布図を作成した。航空機の風洞試験における多孔壁の壁干渉では、マッハ数への干渉量は無視できるほど小さい。よって、マッハ数の干渉量以外で空力係数の補正に必要な、迎角の補正量と、マッハ数の補正量の流れ方向への勾配を求め分布図を作成した。
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