研究課題/領域番号 |
12J02388
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉田 隼也 東京農工大学, 大学院・工学府, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 渦輪 / 粒状体 / パターン形成 |
研究概要 |
本研究では、渦輪が粒状体表面に衝突した際に粒状体表面上に形成される衝突パターンの形成機構解明を目的としている。現在までの研究により、粒状体表面に衝突した渦輪(一次渦輪)によって衝突痕中央部の同心円状のクレーターが形成され、その後、境界面上に発生した渦輪(二次渦輪)が波状変形しつつ粒状体表面上を掘削することで同心円状クレーターの外周部に花弁状の窪みが形成されることが確認されており、また、渦輪の運動状態や粒状体の物性の違いによって衝突痕形成の有無や衝突痕形状に差異が生じることが報告されているが、その詳細は未解明である。そのため、本研究では、渦輪の運動状態及び粒状体物性と衝突痕形状・形成過程との詳細な関連を解明することを目的として実験的研究を行う。このような渦輪による粒状体表面上の掘削は、浅海底や湖底などの堆積物除去手段としての応用が期待されており、また、流体・粒状体間の相互作用に関する研究の一要素としても期待されている。 本年度は、渦輪の発生から衝突までの運動距離を一定とし、渦輪の運動速度を変化させた際の衝突痕形状変化の観測を中心に研究を行った。衝突痕形状は、照明装置によって粒状体表面を下方から照射し、上方から透過光強度を観測することによって衝突痕の三次元形状測定を行った。この実験の結果、渦輪の運動速度を増加させるにつれて、同心円状クレーターの掘削堆積や衝突痕外周部の窪みの個数が増加することが判明した。同心円状クレーターの掘削堆積は、渦輪の運動エネルギーの増加と共に増加すると推測される。また、衝突痕外周部の窪みの個数は、二次渦輪の波状変形の個数と対応していると推測され、この波状変形の波数は一次渦輪の運動状態に依存していると推測される。このため、一次渦輪の運動速度が増加するにつれて衝突痕外周部の窪みの個数が増加していると推測される。現在、一次渦輪の運動状態と二次渦輪の波状変形の関連性を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究により、渦輪が衝突した際に形成される衝突痕の掘削深さ及び衝突痕外周部の花弁状窪みの個数が、渦輪の運動速度によって変化することが確認された。また、渦輪の運動状態と衝突痕深さについて理論面からの考察も行うことができた。これら現時点での研究成果は、本研究の目的である渦輪による粒状体表面掘削過程の詳細な解明にあたり、重要な進展であると考えられる。また、透過光強度によって衝突痕断面形状を計測する手段が確立できたことで、今後異なる実験条件下での計測を容易に行うことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究では、渦輪の衝突までの運動距離や粒状体の粒径・材質を一定とした場合の衝突痕形成過程を中心としている。今後の研究課題として、粒状体の粒径・材質を変化させた場合、及び渦輪の発生から衝突までの運動距離を変化させた場合の衝突痕形状・形成過程の変化が挙げられる。前者は粒状体の動かされやすさ、後者は渦輪の運動状態に影響を与えることから、これらを変化させた場合、衝突痕形状及び形成課程に変化が生じる可能性がある。上記実験の結果を踏まえ、渦輪の運動状態や粒状体の物性と、衝突痕形状・形成過程との間の定量的関係を求めることが今後の課題である。
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