本研究では、渦輪が粒状体表面に衝突した際に粒状体表面上に形成される衝突パターンの形成機構解明を目的としている。現在までの研究により、粒状体表面に衝突した渦輪(一次渦輪)によって同心円状のクレーター(circular crater)が形成され、境界面上に発生した渦輪(二次渦輪)によって花弁状の窪みが(dimple)が形成されることが確認されているが、衝突痕形成過程及び衝突痕形状と渦輪の運動状態や粒状態物性との関連など、未解明の点も多く残されている。そのため、本研究では渦輪の運動状態および粒状体の物性を変化させた際の衝突痕の形成過程や形状の変化の関連を解明することを目的として実験的研究を行う。このような渦輪による粒状体表面掘削過程の解明は、流体・粒状体間の相互作用にかんする研究の一要素となると期待されており、また、浅海底や化学反応炉等の内部の堆積物除去手段としての応用も期待されている。 本年度は、粒状体の粒径を変化させた際の衝突痕形状変化の観測を中心に研究を行った。衝突痕の形成過程は粒状体の粒径を変化させた場合にも大きな変化は見られなかったものの、粒径の小さな粒状体ほど衝突痕の深さが浅くなる傾向が見られた。また、掘削深さを粒状体の粒径によって無次元化を行った結果、粒径0.1mm以上の粒状体の場合、異なる粒径を使用した場合においても渦輪によって掘削される粒状体の層数がほぼ同様であるという結果を得た。渦輪の運動量と粒状体の粒径の双方を変化させた場合において、衝突痕の断面形状から掘削された粒状体の体積を見積もったところ、粒径の異なる場合においても渦輪の運動エネルギーに比例した増加傾向がみられた。これらの結果について、実験においては計測を行うことが困難な粒状体表面上での応力分布と断面形状・掘削深さの関連を解明するため、数値計算による解析を行なったところ、実験結果を解明しうる結果を得た。
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