研究課題/領域番号 |
12J02391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沖田 祐介 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 軟部肉腫 / 筋骨格モデル / シミュレーション / 歩行 / 移動動作 / 三次元動作解析 / 筋電図 / 筋張力 |
研究概要 |
本研究では大腿部軟部肉腫切除後患者を対象とし、三次元動作解析装置や筋電図計を用いた運動計測の手法と筋骨格モデルを用いた順動力学的解析に基づく動作時の筋張力推定の手法を用いて、患者が腫瘍切除に伴う筋機能欠損をどのように克服しているかを調べた。対象者5名の歩行の計測・解析を行ったところ、計測データから股関節内転筋群とハムストリングスを切除した患者では歩行時の立脚期前半にて足関節底屈筋の活動が通常より早い段階で認められた。加えて、筋骨格モデルを用いた解析により患者の動作時の筋張力を推定したところ、股関節内転筋群とハムストリングスを切除した患者では患側接地時に大殿筋の筋張力が健側に比べ大きいことが示唆された。一方で大腿四頭筋の1つや縫工筋を切除した患者では上記の様な特徴は明らかには見られなかった。これより、内転筋やハムストリングスを大きく失った者は大殿筋や足関節底屈筋の活動を高めることで患側下肢の安定性を高めていること、また四頭筋の1筋の切除を行う程度では代償的な筋負荷の増大は顕著ではないことが示唆された。以上の検討から、これまで明らかにされていなかった軟部肉腫患者の腫瘍切除の動作の特徴や具体的な動作戦略の一端が明らかとなり、同様の患者に対しリハビリテーション介入を行う際の事前情報として活用されることが期待される。結果は次年度に開催される3学会(うち国際学会2件含む)にて既に発表が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では患者の計測を開始し、発表が可能となる程度のデータを集め解析することが出来たため、おおむね順調に計画は伸展していると判断する。順動力学的解析については解析に用いるアルゴリズムやソフトウェアを開発したStanford UniversityのNational Center for Simulation in Rehabilitation Researchが主催するワークショップに参加し、持参したデータの解析を進めるとともに有用な情報を交換することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は同時に計測した段差昇降動作の解析、比較対象となる健常者の計測を進めるとともに解析結果を論文化し、整形外科学もしくはバイオメカニクスの海外専門誌に投稿する。当初は現在行っている横断的検討に加え、研究期間中に大腿部軟部肉腫を切除した患者を対象に切除後の動作の経時的変化を調査する予定だったが、リクルートの問題が発生したため中止した。
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