研究課題/領域番号 |
12J02400
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
秋保 貴史 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | ホイスラー合金 / スピントランジスタ / 半導体へのスピン注入 / スピン軌道相互作用 |
研究概要 |
スピンを用いた演算機能や通信機能の実現を可能にするスピントランジスタの開発が重要である。スピントランジスタを実現するためには、(1)強磁性体ソースから半導体に高効率にスピンを注入し、(2)チャネル中でスピンを保持したまま輸送し、もしくは、スピン方向を操作し、(3)強磁性体ドレインでスピン状態を高効率に検出する、ことが必要になる。しかしながら、現状では、高効率なスピン注入と検出が達成されておらず、また、半導体中のスピン輸送特性も十分明かになっておらず、スピントランジスタの動作実証には至っていない。 我々は、平成25年度において、GaAsチャネルへのスピン注入効率の増大に成功するとともに、歪InGaAsチャネルを用いて、スピン軌道相互作用の大きな半導体材料におけるスピン輸送特性を明らかにした。スピン注入効率の向上に関しては、前年度にハーフメタル強磁性体のCo2MnSiとGaAsの間に極薄CoFe層を挿入することでスピン注入効率の増大を達成していたが、今年度はさらにその成果を発展させ、従来のものより一桁以上大きなスピン信号の観測に成功した。さらに、CoFe挿入層のスピン注入効率向上における効果を実験的に明らかにした。この成果は学術論文(Applied Phsycis Letters)に投稿し、掲載が決定している。半導体チャネルにおけるスピン輸送特性の研究に関しては、我々は、GaAs上に成長した歪InGaAsチャネルに対し、電気的な手法により、初めてスピン注入を明瞭に実証し、さらに、スピン緩和時間が歪誘起のスピン軌相互作用によりGaAsに比べ、著しく低下することを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上に述べたように、強磁性体/半導体ヘテロ接合を用いたスピン注入・輸送・検出特性を明らかにすることはスピントランジスタ実現への必須条件である。平成25年度においてホイスラー合金を用いた、高効率なスピン注入・検出を実証することができた。また、GaAsや歪lnGaAsの半導体チャネル中でのスピン輸送特性を明らかにすることができた。これらの成果は、スピントランジスタを作製するうえで必要不可欠な基盤技術である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画は、今までのスピン注入を実証したデバイスに対し、ゲート電極を付加し、ゲート電圧影響下でのスピン注入・輸送・検出特性を明らかにする。そして、最終的にスピントランジスタの動作実証を行う予定である。また、GaAsやInGaAsにおけるスピン輸送特性、特にスピン軌道相互作用や電子スピン・核スピン相互作用等については解っていないことも多い。これらの物性を電気的な手法を用いて明らかにしていくことも視野に入れ研究を進めていく予定である。
|