研究概要 |
近年、タンパク質フォールディングや、品質管理機構など様々な研究分野からその重要性が明らかにされつつあるタンパク質の翻訳途上鎖の動態の全容を明らかにするため、大腸菌翻訳途上鎖の網羅的解析を行った。大腸菌1042遺伝子にっいて、再構成無細胞翻訳系PUREsystem、および細胞内での翻訳伸長パターンを記述し、翻訳アレストについて、発生箇所、強度、PTC活性の状態などについて情報を取得した。全体で4002箇所において翻訳の停滞を示すシグナルが観察され、細胞内だけで生じるものがうち536箇所、PUREsystemのみで観察されるものが1370箇所、両条件で再現されたものは2096箇所であった。アレストが全く観察されない遺伝子は62遺伝子のみであった。検出されたシグナルが実際に翻訳アレストによって生じたものかを検討するため、secA遺伝子のN末端に見られるシグナルに関して詳細に解析した。結果、Glu42, Leu43, Gly45がP-siteに位置した時に翻訳が停滞していることがわかった。その他、yaaX, yagNに見られる強固なシグナルについても解析したところ、それぞれプロリン連続配列とプロリンに富む部位で翻訳が停滞していた。yaaXのシグナルは近年報告されたEF-Pによる翻訳停滞解除機構により解消された。一方yagNのシグナルはEF-Pによっては解消されなかった。このことから、yagNはプロリン連続配列とは異なるメカニズムで翻訳アレストを起こしているものと考えられる。以上の結果から、今回見出された4002のシグナルは、翻訳の停滞によって生じた可能性が高いと考えられる。
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