研究概要 |
原子核物質の状態方程式に表れる、対称エネルギーの密度依存性、特に標準核密度以上の高密度状態での振る舞いの決定を目指している。高密度状態での対称エネルギーを探るプローブとして、核子あたり数百MeVでの重イオン衝突から生成される荷電パイオン比が有効だと考えられている。我々のグループはこれまでに、放射線医学総合研究所のHIMACにて、核子あたり400,600,800MeVのIn(^<28>Si,π^±)X反応、核子あたり400MeVのCsI(129132'136Xe,π^±)X反応の測定を行ってきた。 平成24年度は主に、解析手法の確立を行った。我々は、荷電パイオン測定の為に、プラスチックシンチレータを13枚重ねたパイオンレンジカウンターを用いて、幅広いエネルギーレンジにおいてπ^+,π^-の同時測定を行った。π^+とπ^-は、flight中の媒質でのエネルギー損失は同じであるが、静止後の振る舞いが異なる。π^+は静止後、99.99%の確立でμ^+に崩壊し、この信号を測定する事でπ+の測定を行っている。これに対して、π^-は静止後にμ^-に崩壊するよりも先にパイオニック原子となり、その後原子核と反応し、様々な粒子に崩壊してしまう(starイベントと呼ぶ)。基本的な解析手法は、各カウンターで静止したπ^+が、それより前のカウンターで落としたエネルギー信号ΔEを求め、この多数のΔE信号を使う事で、荷電パイオンを同時に測定するというものである。そしてstarイベントにより生成された粒子のうち、隣のカウンターまで到達する粒子が存在する事を実験データから確認し、その割合を見積もった。 また、測定した荷電パイオン比と対称エネルギーの相関から、対称エネルギーを決定しなければならない。アイソスピン依存のBUU(Boltzmann-Ueling-Uhlenbeck)方程式を使った理論計算を理論研究者と協力して行った。
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