研究概要 |
単層の薄板材料の健全性の高効率・高感度な非破壊評価を提案することを目的として,平成24年度は以下の検討を行った. 1、平成23年度以前に報告者らが行った理論解析の結果を検証するため,以下の実験を行った.本年度の研究計画通り,まず板表面における振動分布を観測するために,レーザドップラー振動計を用いた自動多点観測システムの構築を行った.これを用いて2mm厚のアルミニウム板に対して,S1モードラム波と呼ばれる超音波伝搬モードの一種を斜角トランスデューサによって励起し,S1モードラム波から材料の非線形性により二次高調波として発生すると考えられるS2モードラム波の観測を行った.この結果,二次高調波の発生が観測されたが,材料の非線形性に起因することが明確であると判断できる二次高調波の発生が観測されなかったため,実験装置の改良に加えて以下の2,3に示す摂動法および数値計算による測定に適した実験条件の解析を行った. 2、摂動法を用いて基本波より発生する二次高調波振幅の基本波周波数依存性を検討した.摂動法では二次高調波の波動場が基本波の波動場に対して十分に小さいことを仮定している.この結果,有限な伝搬距離(100mm)においては,二次高調波の相対振幅が最大となる基本波周波数は,報告者らが平成23年度以前に理論的に検討した位相一致条件を満たす周波数とは5%程度異なることが示された. 3、非線形応力ひずみ関係を考慮した時間領域差分解析(FDTD法)による動弾性解析を行った.摂動法と同じ条件にて二次高調波振幅の基本波周波数依存性を検討したところ,摂動法と同様に,有限な伝搬距離においては,二次高調波の相対振幅が最大となる基本波周波数は,位相一致条件を満たす周波数とは5%程度異なることが示された.本研究の成果は材料非線形性を高感度に測定するためのラム波の周波数を選択する上で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラム波のモードを分離し,発生する高調波の振幅を計測するためのレーザドップラー振動計による自動多点測定系の構築を行った.これを用いてラム波非線形伝搬現象の実験的検討を行った.現在,観測した高調波のうち,真に材料の非線形性に由来する高調波の振幅を抽出するための高度化を行なっている.また本実験手法を適用する上で有用なラム波非線形伝搬現象に関する理論的な知見を得た.
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