研究概要 |
本研究では, 薄板材料および積層材料の高感度非破壊評価原理の確立を目的に研究を行っている. 平成25年度は以下の検討を行った. 1. 本年度は単層の板材におけるラム波高調波発生挙動に関するより詳細な数値解析を行うことを目的にしていた. ラム波の幾何的な拡散の影響を考察するために, 平成24年度までに用いていた二次元的な時間領域差分法(FDTD法)のモデルを三次元モデルに拡張した. また拡張したFDTD法の妥当性を検討するために, 二次元モデルとの比較を行い本FDTD法の妥当性を確認した. なお本数値計算には京都大学情報環境機構の大型計算機を用いた. これに加えて, アルミニウム合金板の中に層状の損傷が生じている場合, および基本波ラム波が位相整合条件から外れた場合の高調波発生挙動についての検討を二次元モデルにて行った. その結果ラム波高調波を観測する際に適した実験条件に関する知見を得た. 2. ガイド波の高調波発生挙動を測定する実験系を改良し, レイリー波を用いて高調波発生挙動の測定を行った, これにより材料非線形性に起因して発生するレイリー波の二次高調波が距離とともに増大することが示された. 3. 積層材料における高調波発生条件の理論的解析を行った. 第一にアルミニウム合金板2枚を接着材によって接合した積層材を伝搬するガイド波の分散曲線を計算した. また同時に位相整合条件を満たす基本波, 二次高調波のガイド波の組を導出した. これらの周波数・モードを有するガイド波を基本波として用いることで, 積層材料の材料非線形性を高感度に測定できることが期待される. 第二に本積層材を伝搬するガイド波の非線形伝搬挙動を検討するために, FDTD法を拡張した. 現在, 拡張したFDTD法の妥当性を示すために, 上記理論解析にて導いた分散曲線とFDTD法による数値計算の結果を比較している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では本年度は単層の材料における高調波発生挙動に関するより詳細な数値解析および, 高調波発生挙動に関する実験的検討を行うことを目標としていた. 数値解析については前項の1で示したように, FDTD法および摂動解析により, ラム波高調波発生挙動をより詳細に解析した. また, 実験的検討については, 前項の2に示したように, 材料非線形性に起因して発生するレイリー波の高調波を確認した. さらに計画に加えて, 前項の3に示した積層材料における高調波発生挙動に関する理論的な解析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
積層材料の解析に用いているFDTD法は妥当性が確認でき次第, シミュレーションスキームに非線形項を導入し積層材料中を伝搬するガイド波の高調波発生挙動を検討する予定である. また, ガイド波の二次高調波の実験的測定については, レイリー波の幾何的な減衰や粘弾性の効果が高調波発生挙動に与える影響を検討し, 得られた知見を分散性のあるラム波の測定に応用する予定である.
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