研究概要 |
板材のプレス成形において、形状凍結不良や割れなどの成形不具合を高精度に予測するためには、計算で用いる材料構成式の高精度化が必須である。そのためには精緻な材料試験法が重要である。特にプレス成形における典型的な変形様式である曲げ・曲げ戻し変形では、材料は面内で圧縮および反転負荷を受ける。したがって実際の成形に近い条件で板材の圧縮・反転負荷特性を測定することが必要である。板材を長手方向に圧縮できる試験機は世界で4例あるが、いずれも静的かつ室温で使用する試験機である。実際のプレス成形では材料は0.1/s以上の速いひずみ速度で変形を受ける。さらに近年適用の拡大が進む高張力鋼板では、自身の加工発熱によって成形品の温度が100℃近くに達する場合がある。そのため、温度による変形特性変化を考慮したシミュレーション技術の実用化が求められている。 本研究では、材料応答に及ぼす温度の影響を明らかにするために、加熱機構を有する面内反転負荷試験機を製作した。試験機側面にヒータ(カートリッジヒータ,Watty製)を取り付けて試験片を加熱する。試験機は本研究室で製作した面内反転負荷試験機[Kuwabara et al.:Int.J.Plast.,25(2009),1759-1776]と同様の機構を有するが、加熱や高速変形を実現するため、新たに専用の試験機を製作した。また、接触式ひずみセンサでは高温下で使用することはできないため、新たに画像測定によるひずみ計測システム(ARAMIS,GOM社製)を導入した。何例か単軸引張試験を行い、その結果、供試材の温度が上がるに連れて塑性流動応力が低下する温度依存性を確認した。今後、得られたデータから、材料の自己発熱を考慮できる材料モデルを開発し、成形試験と成形解析を行いモデルの妥当性を検証する。
|