研究概要 |
板材のプレス成形において、形状凍結不良や割れなどの成形不具合を高精度に予測するためには、計算で用いる材料構成式の高精度化が必須である。そのためには精緻な材料試験法が重要である。特にプレス成形における典型的な変形様式である曲げ・曲げ戻し変形では、材料は面内で圧縮および反転負荷を受ける。したがって実際の成形に近い条件で板材の圧縮・反転負荷特性を測定することが必要である。板材を長手方向に圧縮できる試験機は世界で4例あるが、いずれも静的かつ室温で使用する試験機である。さらに近年適用の拡大が進む高張力鋼板では、応力の引張/圧縮(TC)に非対称性が顕著であり、また、自身の加工発熱によって成形品の温度が100℃近くに達する場合がある。そのため、温度による圧縮変形・反転負荷特性の変化を考慮したシミュレーション技術の実用化が求められている。 本年度は二つの研究課題に取り組んだ. 一つは冷間における高張力鋼板のTC非対称性を考慮したスプリングバック解析, 二つ目は温間における高張力鋼板の面内反転負荷試験である. 前者に関しては前年度の研究で形状を最適化した試験片を用い, TC非対称性を測定した. 測定値から材料モデルを同定し, 有限要素解析に組み込んでスプリングバック解析と実験を行った. その結果, TC非対称性がスプリングバック解析精度に及ぼす影響を明らかにした. 本成果は本年5月に開催される国際会議ESAFORM2014で発表する予定である. 後者に関しては, 590MPa級高張力鋼板の面内反転負荷試験を行い, TC非対称性及びバウシンガ効果の温度依存性を明らかにすることに成功した. 今後980MPa級高張力鋼板で試験を行う予定であり, 高張力鋼板の温度存性を考慮したモデルの作成が期待される.
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