研究課題
近年、熱ショックタンパク質72(HSP72)が腫瘍特異抗原と結合したまま、細胞外へと放出されることが報告された。そこで、本研究では血中のHSP72と結合するタンパク質を質量分析計にて同定および比較解析することで、多発性骨髄腫のマーカー探索を試みた。2年目の目標は、1年目に確立した血中のHSP72複合体単離法(NHq法)により同定したマーカー候補分子が、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当であるか検証することである。1. マーカー候補タンパク質とHSP72の結合確認1年目に同定された4つの候補分子のうち、2分子についてHSP72との結合を確認したところ、マーカーとなり得る分子が全長タンパク質だけではなく、断片化したフラグメントタンパク質である可能性が示唆された。さらに多発性骨髄腫の培養細胞を用いて解析したところ、全長タンパク質は主に細胞内でHSP72と結合しているが、フラグメントタンパク質は細胞内外でHSP72と結合していた。以上より、HSP72に結合するフラグメントタンパク質は腫瘍細胞から積極的に分泌されている可能性がある。2. ELISAによる定量解析および疾患特異性の評価全長タンパク質として検出されたHistone H4の血中濃度をELISA法にて定量し、健常者22例、多発性骨髄腫患者30例、その他血液疾患患者30例において比較解析した。その結果、3群に有意な差は見られず、Histone H4は多発性骨髄腫特異的なマーカーとしては妥当でないことが明らかとなった。また、すべての群において、血清中のHSP72レベルとHistone H4レベルに相関は見られなかった。3. 患者検体数を増やした再スクリーニング質量分析による同定精度を高めるために、患者検体数を10例に増やし、マーカー候補分子の再スクリーニングを行った。その結果、10例すべての患者から同定されたタンパク質が3つであった。その中から最も同定精度の高かったTim13について解析を進めている。
3: やや遅れている
血中の微量タンパク質の同定法としてNHq法を確立し特許出願に至った。しかし、本手法により同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子4つのうち、全長タンパク質として検出した分子は1つであり、その血中レベルは患者と健常者の群間比較において有意差がなかった。
同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子のうち3分子は断片化しているため、市販のELISAキットによる定量は困難である。そこで、フラグメントタンパク質の抗体を作製し、NHq法を改良したELISAシステムにより候補分子の血中レベルを定量する。また、患者検体数を増やした再スクリーニングにより新たな候補分子を同定し、HSP72との結合を確認している。新候補分子についても血中レベルを定量し、健常者群、その他血液疾患患者群と比較し、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当か検討する。
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PLOS ONE
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