研究課題/領域番号 |
12J02545
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
延島 大樹 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 発光デバイス / 多色発光 / 電気化学発光 / 交流駆動 |
研究概要 |
本研究は、電気化学発光(ECL)を用いた新規の多色発光素子の実現を目とする。ECL素子は溶液注入プロセスで作製可能な、生産性・コスト面で優位性を持つ新規発光素子である。申請者は交流電圧で駆動するECL素子の動作機構や特性向上についての研究を行なっており、今回はAGECLにおいて印加周波数を切り替えることで発光色を制御する機構の実現を目指す。AC-ECLによる発光色制御についての報告はこれまでなく、また多色発光が可能な発光素子は産業的に高いインパクトを持つ。 この研究について、ルブレン(RUB)とジフェニルアントラセン(DPA)を溶解させた混合溶液系にて、黄色(@300Hz)と白色(@1,000Hz)の発光を、印加周波数によって可逆に切り替えることに成功した。また反応機構解析によって、電気二重層によって電極界面に形成されるポテンシャルが、ある程度の高周波数領域では、材料の反応に必要な電位に達しないことが分かった。結果、その電極ポテンシャルを印加周波数によって制御することで、それぞれの材料に起因する発光色を取り出すことが出来たと考えられる。しかし、この系では励起エネルギー移動などの副反応が異種材料問で生じるため、発光効率や輝度が低下してしまうことも同時に分かった。 副反応を防ぐ目的で、各材料を電極上に固定した多色ECLの系を提案した。その初期検討として、DNA/Ru(bpy)_3^<2+>組織体を電極に製膜したAC-ECL素子を構築し、実験を行った。Ru(bpy)_3^<2+>はDNAと相互作用させることで無輻射失活を抑止し、発光特性を向上させることが分かっていたが、このAC-ECL系ではさらにユニークな結果として、通常の電気化学系における電気二重層の形成時間よりも、遥かに短い半周期時間を持つ印加周波数領域(@~10kHz)でもECLを示すことが分かった。この現象については今後、イオン交換膜にRu(bpy)_3^<2を>付与したものや、発光性の高分子材料を用いた電極固定系の挙動との比較を行い、詳しい機構の解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、多色ECL素子の実現とその反応機構についての解析が進行した。副反応の存在についても明らかにし、それを抑止する手法としての電極固定系ECL素子の検討も進んでいる。固定系ECLに用いた材料は予定と異なるものの、DNAを利用したことで予期しないユニークな現象も発見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
DNA組織体を用いたAC-ECL系で見られた超高周波領域の発光についての解析を進める。具体的には、高分子材料を用いた系や、ナフィオン・フレミオンといったイオン交換膜にRu(bpy)_3^<2+>を付与した系などとの比較を行い、現象を明らかにする。また、比較検討に用いた高分子材料やイオン交換膜系、および異なる発光色を示す材料をDNAと組織化させた材料等を用いることで、固定系AC-ECLの複数色発光制御の実証を目指し、その詳細なメカニズムや優位性を明らかにする。
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