研究概要 |
2価Snの単純酸化物でるSnOは典型元素酸化物としては珍多し<ρ型の伝導性を示すことが知らている. これは, SnO中で2価Snがローンペア電子と呼ばれる孤立電子対を有し, 価電子帯上端で酸素のρ軌道と混成することで価電子帯のエネルギー準位が浅くなっていることが一因と考えられる. 本年度の研究では, 作製雰囲気の精緻な制御により, SnO薄膜の伝導キャリアタイプをρ型からn型へ変化させることを試みた. Snターゲットを使用し成膜した薄膜のXRDプロファイルより薄膜はSnO単相であり, YSZ単結晶基板上に(001)配向で成長していることがわかった. また, 系統的なXRD測定より薄膜と基板の結晶の面内方位は<110>_<SnO>//<100>_<YSZ>という方位関係であることがわかった. ホール効果測定とゼーベック測定の結果, 特定条件下での成膜によりn型およびp型それぞれの電気伝導性を示すSnO薄膜を作製できることがわかった. キャリア濃度の温度依存性から, その活性化エネルギーはn型試料においては0.13eV, p型試料では0.04eV程度であることがわかった. これまでにSb添加によるn型SnOの作製は報告されているが、無添加で作製したという報告は本研究が初めてである。Sb添加SnO薄膜の室温におけるHall移動度が1cm^<2>/Vs程度であるのに対し, n-SnOの室温におけるHall移動度は11cm^<2>/Vs程度であり, 本手法によりキャリア移動度の高い試料を作製できることが示された.
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