研究概要 |
本研究は, 偏微分方程式に対する構造保存数値解法の一種である「離散変分法」および「離散偏導関数法」の実用化に向けた基礎研究を目的としていた. 1年目は以下の知見を得た. 離散偏導関数法は空間の離散化に有限要素法を用いる手法であるが, その手法の目的(エネルギーの保存性や散逸性を再現する)の特殊性ゆえに適用可能な偏微分方程式のクラスはかなり限定されたものになると思われていた. これに対して, L2射影という技巧と, 形式的弱形式という概念を導入することで, これまで適用が困難と思われていた偏微分方程式群に対して所望の有限要素法スキームを導出する新しい枠組みを構築した。さらに, 様々な境界条件やより実用的な空間2次元以上の問題にも対処可能であることを示し, 実際に数値実験を行った. その他にも, 当初の予定にはなかったが, ウェーブレットの理論と離散偏導関数法を組合せ, 時間ステップ毎に空間格子を変化させる, 格子の制御付き離散偏導関数法を開発した. 実際にKdV方程式のような基礎的な波の方程式に対して効率的な数値計算ができる様子を数値実験で確認した. 本年度はさらに, 時間刻み幅制御方法の確立に向けた研究の開始を予定していた. そのような手法の確立は原理的には可能であるが, 計算量などの問題が大きく, 実用化といった目的に必ずしもそぐわないという理由から, 当初の予定を若干変更し, より効率的なエネルギー保存解法の確立に向けた研究を開始した. 実際に, 時間精度4次までの保存解法を導出し, 既存手法と比べて非常に高速な解法となっている様子を確認した
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