研究課題/領域番号 |
12J02584
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇都宮 徹 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | フェナレニル誘導体分子 / 電気化学測定 / 周波数変調原子間力顕微鏡 / グラファイト |
研究概要 |
電極表面は電子移動反応が起こる重要な反応場であり、エネルギー変換場として大変重要である。本研究ではグラフェン端で生じている電子授受という観点から、グラファイト電極界面の電子移動についてモデル分子の電気化学測定や走査プローブ顕微鏡を用いて分子論的な描像を得ることを目的としている。今年度は以下の課題に取り組んだ。 1.フェナレニル誘導体分子の電気化学測定 フェナレニル誘導体をグラファイト電極に吸着させて、水溶液中で電気化学測定を行った。フェナレニルはzigzagエッジと呼ばれるナノグラフェンの構造・物性を説明するモデルとして注目を集めている。フェナレニル誘導体分子を吸着させた電極が酸化還元ピークを持つことは既に明らかになっていたが、酸素発生直前まで電極電位をサイクルさせると、電子移動活性な吸着分子の量が増加していると解釈できる結果が新たに得られた。吸着している分子膜の構造が変化することで、電子移動が可能になる吸着分子が増加していると考えられる。 2.フェナレニル誘導体分子の走査トンネル顕微鏡(STM)観察 上記の電気化学測定を用いて示唆された界面描像を明らかにするために、電極表面の構造を原子レベルで解像可能なSTMを用いて、吸着した分子の観察を試みた。しかしながら、フェナレニル誘導体分子の吸着電極を変更した場合でも分子に由来する構造は観測されなかった。分子と基板の間に働く相互作用が小さいために、分子が固定されなかったと考えられる。 3.グラファイトの電気化学周波数変調原子間力顕微鏡(EC-FM-AFM)観察 グラファイト電極の電気化学環境下における微細な構造を検察するために電極表面の構造を原子レベルで解像可能なFM-AFMを用いて、観察を行った。その結果、電位に依存したグラファイトステップの変化を観測することに成功した。既存手法である電気化学振幅変調(EC-AM)AFMと結果の比較を行い、EC-FM-AFMの方がより正確な表面描像が得られている可能性が高いことを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェナレニル誘導体分子の電子移動特性については興味深い挙動が現れ、近いうちに論文投稿を行える段階に来ており、順調であるといえる。分子の走査トンネル顕微鏡観察は現在のところうまくいっておらず、遅れている面もあるが、来年度に予定していたグラファイト電極の電気化学周波数変調原子間力顕微鏡観察について、予定を早めて進めているため、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の電気化学周波数変調原子間力顕微鏡(EC-FM-AFM)を用いたグラファイト電極の観察を引き続き遂行し、水溶液中に含まれる支持電解質の影響や電位の影響についても考察を行う予定である。 さらに、EC-FM-AFMを他の系においても適用して、電極表面近傍の微細構造について検討する予定である。特に、金属表面への適用を検討している。
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