研究課題/領域番号 |
12J02589
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原 祥尭 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 地図生成 / LIDAR(レーザスキャナ) / マッチング / Sliding Window / ベイズ推定 / マルコフ過程 / 搭乗型車両 / 移動支援 |
研究概要 |
本研究では、自律走行車両のさらなる実用化を目指し、大域的自己位置認識の実現を目的としている。自律走行車両の具体的なタスクとして大型商業施設での人の移動支援を考え、搭乗型車両を開発中である。空間が広く、また人込み環境であるが故に、自律走行の実現に際して多くの課題が存在する。本研究では特に自己位置認識の高度化を目的としているが、自己位置を認識するためには参照する地図が必要となる。そこで本年度は、広大な環境における地図生成技術の研究開発を行った。 屋外などの広大な環境や曲がり角などの見通しの悪い環境においては、LIDARなどのセンサ視野が不足し、地図生成に失敗する場合が多い。これは、従来手法は1次のマルコフ過程に基づいているため、各時刻においてその瞬間のセンサデータしか利用していないことに原因がある。そこで本研究では、時系列の複数の外界計測データを貼り合わせて蓄積し、仮想的にセンサ視野を拡大して視野の不足を補うことを考えた。従来手法を拡張し、高次マルコフ過程のモデルに基づいて定式化を行うと、現在から過去の複数のセンサデータを用いた地図生成が導出される。本研究ではこの定式化に基づき、各時刻において複数のセンサデータをスライドしながら利用する、Sliding Windowマッチングと呼ぶアルゴリズムを実現した。 屋外の実環境において、走行距離1.5㎞程度にわたって地図生成の実験を行った。従来手法では、LIDARの実際の測定可能距離(十メートル程度)が空間の広さ(数百メートル程度)に対して短いことが要因となり、地図が歪んで破綻した。これに対して提案手法では、センサデータを蓄積して利用することで視野の不足を補い、整合性のある正しい地図が生成できることを確認した。 今後も研究を准め、地図を用いた自己位置認識を実現すると共に、搭乗型車両の開発を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果の社会への還元を強く意識しており、大型商業施設での利用を想定した搭乗型車両を実用化目標として具体的に定めて研究を進めることができた。研究内容は学術的にも評価されており、研究奨励賞などを多数受賞した。本研究で提案した地図生成法は従来手法を確率論に基づいて拡張したものであり、実環境における長距離の走行実験により定量的な評価を行って説得力のある成果を得ている。また関連研究を入念に調査することで研究計画を常にブラッシュアップし、研究の方向性をしっかり定めて実装に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
大域的自己位置認識に必要となる、測定対象物の3次元形状と受光強度に基づく高次元特徴量の設計を行う。本研究で提案する高次元特徴量は、従来の画像に対する高次元特徴量とは異なり、3次元形状と受光強度に基づく新たな特徴量である。特徴量の状態空間で探索を行うことで、地図上での現在位置を認識する大域的自己位置認識を実現できる。高次元特徴量の集合として表現される地図のデータ構造、および特徴量の状態空間での探索アルゴリズムを検討し、高効率な大域的自己位置認識が可能となるように実装を進める。また開発中の搭乗型車両を用いて、屋内外の実環境において自己位置認識の実験を行い、性能を定量的に評価する。
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