本研究では、大規模な歩行者空間における自律走行車両の実用化を目的として、大域的自己位置認識に取り組んだ。大規模な歩行者空間には広大な環境や見通しの悪い環境が存在し、LIDAR: Light Detection and Ranging(レーザスキャナとも呼ばれる)などのセンサ視野が不足するため、自己位置推定や地図生成が困難である。また、屋内環境と比較して多様な障害物が存在するため、その検出も難しい。本年度の取り組みでは、自己位置推定に用いる地図生成の新たな手法を提案して評価すると共に、自己位置推定や障害物検出の技術と組み合わせてシステムインテグレーションを行い、一般の人々がいる市街地における自律走行を実現した。 従来の地図生成手法では、ランドマークとなる測定対象物を充分に計測できずに現在のセンサデータの情報量が乏しい場合、自己位置の推定を誤って地図生成に失敗してしまう問題があった。そこで本研究では、過去の複数回のセンサデータを蓄積して重ね合わせることで、仮想的にセンサデータの情報量を増やして正しく地図生成を行う新規手法を提案した。 市街地における自律走行の実験の場であるつくばチャレンジ2014の環境で、走行距離 1.5 [km] 程度にわたって地図生成を行い、性能を評価した。過去5秒間、10秒間のスキャンを利用した提案手法では、生成した地図の形状誤差は最大でも 0.6 [m] となった。一方で従来手法では、20 [m] 以上の誤差が発生している。 次に、過去のセンサデータを利用した地図生成手法と、形状データに基づくパーティクルフィルタを用いた自己位置推定手法、3次元形状からの障害物検出手法を新たに実装して組み合わせることで、自律走行のシステムを構築した。前述のつくばチャレンジ2014の環境での実験の結果、走行距離 1.5 [km] 程度の自律走行を成功率80%で達成した。
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