本年度は、まず、時空間データの統合利用に密接に関連する次の各理論を固めた : (i)点データの補間(点補間)法、(ii)面データの補間(面補間)法、(iii)Modifiable areal unit problem (MAUP)の対処法、(iv)Sampling design problemの対処法。 (i)ではEigehvector spatial filtering (ESF)と呼ばれる空間統計手法を点補間法に拡張した。同手法は、従来離散空間上で議論されてきたESFモデルを連続空間上へと拡張したものであり、高い新規牲を有するとともに、点補間を含む幅広い探索的空間データ解析への応用が期待できる。地価データを用いた実証分析より、提案手法の精度は代表的な点補間法であるkrigingと同等であり、かつ高速計算が可能であることを確認している。(ii)では、Geographically weighted regfession (GWR)モデルと呼ばれる空間統計モデルを面補間法に拡張した。本拡張にあたっては、これまで独立に議論の進められてきた計量地理学と空間統計学の両面補間法を包括的にレビューしており、ここでの議論は両分野のアプローチを融合する第一歩として重要である。(iii)では(ii)で構築した手法がMAUPの対処法となりうることを示している。最後に、(iv)では地価データのためのSampling design手法を構築している。 以上の理論構築は、いくつかの実問題に応用している。まず、(ii)で提案した面補間法を、人口や面積などと並んで都市の分野における基本的な原単位のひとつとして知られる建物ストックの詳細推計に応用した。加えて推計されたストックデータを用いた電力需要の詳細推計も行っている。また、地価調査事業削減の決定を踏まえ、(iv)で構築した手法を地価評価地点の効率的削減の議論に応用している。 以上の議論を通し、本年度は、理論構築とその実問題に対する有用性を明らかとした。
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