研究概要 |
ハイドロキシアパタイト(Hydroxyapatite;HAp)[Ca10(PO4)6(OH)2]は骨や歯の無機主成分であり,人工骨等の生体材料に利用されている.HApは固溶元素やCa空孔によりその生体材料特性が変化するため,これらを利用した特性の精密な制御が期待されている.本研究の目的は,組成制御したハイドロキシアパタイト(HAp)中の固溶元素の局所環境を明らかにし,その局所環境を制御して物性との相関を検討することで,固溶元素添加HApの新たな設計指針を得ることである.しかしながら,HApは一般に非化学量論的であり,そのCa/P比は生体材料特性に大きく影響を与えるため,HApの物性を評価する際に組成制御は非常に重要である.そのため,固溶元素やCa空孔による生体材料特性の変化を調べるためには,化学量論組成HApの特性を正確に調べる必要がある.昨年度は化学量論組成HApの生体材料特性の調査を行った.HApの合成は湿式法により行った.XRDによる構造解析,XRFによる組成分析の結果,化学量論組成HApが合成できていることがわかった.これらの未熱処理・熱処理試料の細胞毒性試験結果では,熱処理により細胞毒性が大きく低減していることがわかった.また,同試料の溶解性試験を行った結果,細胞毒性が大きい試料ほど強い溶解性を示し,細胞毒性と溶解性に強い相関があることがわかった.これらの要因としては試料の粒径による効果や,熱処理による表面状態の変化が考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の目的における,化学量論組成HApの合成およびその特性評価を行った.出発材料の供給比,熟成温度,時間などの,合成における様々なパラメータを最適化することで組成制御が可能となった.さらに,特性評価として,細胞毒性評価,溶解性試験を行った.実験計画ではこれらの作業に約1年かかるとしており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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