研究計画の最終年にあたる本年度は、これまでの研究成果を二度の口頭発表において公開すること、また来年度以降に発表される書籍の執筆作業を中心として進められた。 まず口頭発表については、2014年6月に大阪で開催された「ドゥルーズ・スタディーズアジア学会」と、2015年2月における日本記号学会分科会第二回研究会で発表をおこなった。前者では、これまでの「身体の測定とその表象」にまつわる映像技術の問題を20世紀初頭の生物学の文脈へと展開することで、そのなかで応用された連続写真や映画といった映像メディアをアニメーションという観点からとらえ直すことの意義を主張した。後者の内容は、これまでの研究成果をマンガという視覚文化に展開するものであり、複数のメディアによる身体の表象を比較検討することによって、それぞれにおいて運動やリズムが制御される方法を検討した。両者の発表ではともに、哲学や映像論を専門とする研究者たちと有意義な議論を交わすことができた。 これらの仕事を論文などにまとめる作業と平行して、昨年度に提出した博士論文の大幅な加筆・修正が進められ、後者は次年度中に単著として発表する予定である。その内容は「身体をめぐる映像技術論」として、本研究計画の主たる成果にあたる。また、三年間にわたる受入研究者との共同作業として、映像文化論集の翻訳出版と教科書の刊行準備に向けた編集と翻訳や執筆作業も大きく進展し、それらもまた、本研究計画の成果の一部となっている。
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