研究課題/領域番号 |
12J02649
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
町田 晋一 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 相同組換え / RAD51 / RAD54 / Nap1 / クロマチン高次構造 / リンカーヒストンH1 / DNA二重鎖切断損傷 |
研究概要 |
本研究の目的は、相同組換えとクロマチン構造の関係性を解明することである。特に、リンカーヒストンを含む高次クロマチン構造が相同組換え反応に及ぼす影響の解析を試みた。高等真核生物においてヌクレオソームと同程度存在するピストンH1は、ヌクレオソーム間のリンカーDNAに結合し、クロマチンを高次に折り畳む。しかし、ヒストンH1によって高次に折り畳まれた高次クロマチン構造中における相同組換えの反応機構は解明されていない。そこで、相同組換えと高次クロマチン構造の関係性を明らかにするために、試験管内で再構成したクロマチンを用いて、相同組換えで中心的に働くことが知られているRAD51及びRAD54による相同組換え反応の解析系を確立し、ピストンHlを含む高次クロマチン構造上における相同組換え反応の解析を行った。解析の結果、ピストンH1により形成される高次クロマチン構造は、RAD51及びRAD54が触媒する相同対合反応において著しく阻害的に働くことが明らかになった。さらに、この高次クロマチン構造形成による相同対合の阻害は、ヒストンシャペロンとして知られているNaplにより劇的に解消されることを明らかにした。また、培養細胞を用いた解析から、Nap1がRAD51及びRAD54と相互作用し、DNA損傷部位に集積することで、相同組換えを促進させることが明らかになった。これらの結果から、ヒストンH1を含む高次クロマチン構造は、相同組換え反応に対して阻害的に働き、その阻害効果はヒストンシャペロンであるNaplにより解消され、RAD51及びRAD54が触媒する組換え反応が促進することが示唆された。従来の裸のDNAを用いた解析とは異なり、試験管内で再構成したクロマチンを用いて解析を行った本研究により、相同組換えにおける高次クロマチン構造の動的な変化が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究結果により、高次クロマチン構造が動的に変化することで相同組換え反応が制御されることが解明された。本研究の目的は、相同組換えとクロマチン構造の関係性の解明であり、現在までの研究成果はその目的を達成する上で最も重要な要因のうち一つを解明したことから、計画以上の進展と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方針として、相同組換えにおけるNap1による高次クロマチン制御機構のより詳細な解析が挙げられる。現在までの研究成果により明らかになった相同組換えにおけるNap1によるクロマチン構造の動的な変化について、リンカーヒストンの挙動に着目し、更なる詳細な解析を試みる。また、クロマチンの機能調節を担うヒストンバリアント及びピストン修飾に着目したクロマチン構造と相同組換え反応の関係性の解明を行う。現在までに、多種のヒストンバリアントを用いて、ヌクレオソームの再構成に成功している。さらに、化学的にメチル基をヒストンテールに付加する系も確立している。これらの系を用いて、ヒストンバリアント及びヒストン修飾と相同組換え反応の動的な制御機構の関係性について明らかにしたい。
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