研究概要 |
無機ナノマテリアルはバルクサイズの物質とは異なる特異な性質を示す。これらの機能は物質の形状・サイズに強く依存する。そのため、精密な構造制御法の開発が強く求められている。バイオミネラリゼーションの応用は、最も期待される無機ナノ材料作成法の1つである。本研究では、無機物に親和性を示し、その鉱質形成を促進するペプチドであるバイオミネラリゼーションペプチドを用いた汎用性の高い無機ナノマテリアル構造制御法の開発を目的としている。 本年度は、銀に対するバイオミネラリゼーションペプチドであるTBPの多量体化・配向化が銀ナノ粒子の構造・特性に及ぼす影響を解明するために、多量体数・配向の異なる多量体形成ペプチドを用いた解析を行った。そこで、高い安定性と特異性を示すヘテロダイマー形成ペプチドE3とK3にTBPを融合したTBP-E3,TBP-K3をデザインし、化学合成を行った。合成したTBP-E3,TBP-K3の多量体形成能をCDスペクトルを用いて解析を行った結果、TBP-E3,TBP-K3それぞれは単独では特有の構造は形成せず、ランダムコイル状体であることが示された。一方、TBP-E3とTBP-K3を混合することによって強いαヘリックス・形成が観察された。これらの結果より、TBP-E3とTBP-K3を混合することで特異的にヘテロダイマーを形成しており、目的とした多量体化・配向制御が行われていることが示唆された。 さらに、TBP-p53Tetによって生じた銀粒子の詳細な特性評価を行った。TBP-p53Tetによって生じた銀ナノ粒子の紫外可視光吸収測定を行った結果、436nmに表面プラズモン共鳴由来だと考えら得られる強い吸光が観察された。この結果から、TBPの多量体化・配向化によって生じた銀ナノ粒子は特異的な光学特性を示す可能性が示され、本手法の機能性ナノマテリアル作成への応用性が示された。
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