研究概要 |
本研究では, 主に情動機能と前頭葉機能に着目し, メタ記憶に及ぼす要因についての検討, メタ記憶の個人差に関する神経基盤の解明を主な目的としている。本年度は, 単語リストの記憶課題を用いてパーキンソン病群と健常対象群との成績を比較し, 成績とメタ記憶の関連について明らかにすることを目的として研究を行った。 パーキンソン病群は健常対照群に比べ, 全体的に記憶課題の成績が低下しており, 第2・第3試行目においてそれが顕著であった。また, パーキンソン病患者では, 第2試行の成績とメタ記憶質問紙のうちTaskという下位尺度得点と関連がみられた。このことから, 記憶に関して一般的に合理的とみなされている知識を有している患者ほど成績が良かったと考えられるが, 直接的に関係するというよりも, 知識を有している人ほど意味的クラスタリング方略の利用が多く, 結果として成績が良かった可能性が考えられる。しかし, 記憶方略の選択には知識的側面だけでなく, モニタリングの側面も大きく影響する。すなわち, 課題がどのようなものかしっかりと認識出来ない限り, 知識も活かされない。本研究の対象であるパーキンソン病患者では前頭葉機能の低下がみられることが多い。したがって, 前頭葉の働きが大きく関与するモニタリング機能が健常対照群と異なる可能性がある。今後, パーキンソン病患者のモニタリング機能についても着目し, 記憶成績や記憶方略との関連について検討することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 単語リストの記憶課題を用いてパーキンソン病群と健常対象群との成績を比較し, 成績とメタ記憶の関連について明らかにすることを目的とし, 研究に取り組んだ。研究成果については, 随時, 関連学会(日本心理学会, 認知神経科学会, 高次脳機能障害学会学, 北陸心理学会など)にて発表を行った。実際に患者を対象とした研究を進めていく中で, 研究で使用している質問紙や実験手続きなどの問題点が生じたが, いずれも今後の研究を発展させるために重要な点であることから, 研究全体の進行としては概ね良好であり, 意義のある成果が得られている。
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