研究概要 |
患部に開けたひとつの孔に手術器具と内視鏡を挿入して行う単孔式内視鏡手術は,傷の目立たない手術として注目されている一方で,器具類が密集しているため器具同士の衝突や視野欠損など多くの問題点がある.本研究は,これらの問題を解決するひとつの方法として単孔式内視鏡手術のための新しいマスタ・スレーブロボットシステムを提案した.これまでの手術ロボットはマスタ部が手術台から離れた場所に配置され,遠隔で操作を行なっていたが,本システムはマスタ部をあえて患部に直接置き,単孔から挿入し内部で展開したスレーブ部をマスタ部で操作する仕組みとなっている.本システムによって,従来の腹腔鏡手術とまったく変わらない操作や視野を医師に与えることができ,単孔式内視鏡手術に慣れていない医師でも腹腔鏡手術の操作スキルを持っていれば単孔式内視鏡手術を行うことができる. 平成24年度の大まかな活動としては,医師の意見を聞きながらコンセプトの再考をし,アイデアを元にマスタ部とスレーブ部のプロトタイプを作成した. マスタ部のプロトタイプについては操作に用いる5自由度の情報を取得できるセンサ系を設け,仮想的なスレーブ部を描画するシミュレータを作成しセンサが問題なく動作していることを確認した.また,より精密な操作を可能とするために,医療機器メーカーの協力を仰ぎ,マスタ部小型化や摩擦の低減化,動作範囲の拡大などの改良を行った, スレーブ部はマスタ部と同様に5つの自由度が必要であり,ワイヤやプーリー,モータを用いて簡易プロトタイプを作成した.結果として,各自由度は問題なく動作し手術操作の一連の動作が実現可能であることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の活動としては,まずスレーブ部の完成度を上げ,完成後はマスタ部と連携し,マスタ部の動きに応じてスレーブ部が正しく動作するか確認していきたい.その後,本システムを用いて豚の肝臓を用いたex vivo実験やi nvivo実験に取り組む予定である.
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