生物の日周活動リズムは普遍的に見られ、一般的にはそれらは光や温度といった環境因子によって調節されている。例えば洞穴性動物といったような、明瞭な環境周期にさらされずに生息している生物においても活動の日周性が見られる生物が存在する。シロアリ類は地下や朽木の中といったほとんど光の環境変化にさらされない場所に棲む。地中性シロアリのヤマトシロアリを用いてその野外コロニーリズムを新たに改良した材を食害する音を探知するシステムを用いて明らかにした。彼らは夏期においては夜活動的になり、その他の季節では特に日周期的な活動は見られなかった。さらに、巣における温度を解析すると、夏期において、巣の温度と活動は負の相関を示した。対照的に、冬季と秋季においては正の相関を示した。 このことはヤマトシロアリでは野外コロニーの活動は温度に影響を受けており、その温度に対する反応は単純な比例関係でないことがわかった。 また、社会性昆虫リズムの個体間相互作用についての実験を実施した。社会性昆虫は多数の個体が密集してコロニーを形成して暗い巣の中に棲息しており、全個体が必ずしも規則正しい一日の明暗のサイクルを経験していない。そのような状況において、各個体の活動リズムはどのような方法で保たれているのであろうか。巣にとどまり育児に専念することが分かっている育児蜂を巣で飼育し、以下の2種類の互いにタイミングのズレた環境周期を同時に育児蜂に与え、育児蜂のリズムがどちらの環境因子に従うか調べた。(1)育児蜂の滞在区域(巣内)に与えた明暗サイクル(2)育児蜂に自由に接触してくる蜂(活動リズムの明瞭な採餌バチ)の活動サイクル。その結果、処理後の育児蜂は明暗サイクルではなく蜂の活動サイクルに同期したリズムを示すことがわかった。
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