社会性昆虫は群れ全体を高度に組織化させており、それに伴い各個体は形態や行動が分化している。概日リズムといった生物の活動周期性についてもコロニー内で分化することがいくつか報告されているが、代表的社会性昆虫であるシロアリでそのような研究はまだない。本研究によりシロアリも他の社会性昆虫同様カースト間で行動リズムに違いが見られた(Fuchikawa et al. 投稿準備中)。交尾飛行に出かける繁殖カースト個体は実験室における個別飼育下でも行動に概日リズムが見られる。しかしながら、不妊であるワーカーは同様の飼育環境下で概日リズムが見られない。これらから、繁殖に向かう個体は交尾相手に出会う効率のために活動タイミングを整え、一方、採餌や巣の構築に関わる個体は一日を通して労働することでコロニー間の競争力を向上させるといったやり方で、コロニー内の社会的役割に応じて柔軟にリズム特性を変えていると考えられる。 コロニー内の各個体は分業に伴い分化した行動リズムを示すものの、その行動リズムの分化は時計遺伝子によってどのように生み出されているのか、シロアリのみならず、他の社会性昆虫でも明らかになっていない。私は様々な実験的操作に最も有利なミツバチを用いてその時計遺伝子による行動リズム分化の制御機構を明らかにしようと試みた。私はイスラエル・ヘブライ大Guy Bloch氏との共同研究で社会性昆虫ミツバチの脳内にある行動リズムを制御する部位(時計細胞を社会性昆虫で初めて明らかにした。この細胞において時計遺伝子PERIODタンパク発現量は日内変動していた。
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