研究概要 |
クモヒメバチ類の特異的な産卵行動様式に依拠した同所的種分化機構解明のため、本年はその基礎的データの収集、分子系統樹作成およびインドネシアにおける調査に従事した。 分子系統解析では、大阪自然史博物館の松本吏樹郎氏と共同で、特に2雄Zatypota属の種間系統樹作成に当たり、欧州産サンプルを加えるために2012年9月から10月にかけてイギリスならびにスウェーデンでの調査を行った。得られたサンプルのほとんどは幼体クモに寄生した状態の幼虫であり、クモもハチも形態からの同定は不可能であったが、クモをDNAバーコード同定し、その寄主記録をTaxapad 2012を使って引くことでハチの同定を行うという手法を用いた。 クモヒメバチ類は、熱帯において急激に種数を減らすという現象がある。それが捕食圧によるものか気温などの外部環境によるものかは定かでないが、約1,000mを超えた辺りの熱帯の高山帯ではクモヒメバチ類が散見されることを見出している。さらに、いわゆる陸の孤島として隔絶された熱帯高山帯で同属のクモヒメバチ類が複数種得られる系がもしあれば、それらがそのミクロバビタットにおいて同所的に種分化している可能性が大いに考えうる。まずはその高山帯における複数の同属近縁種の分布域を見出すために、2013年1月から3月にかけてインドネシア・南スラウェシ・ロンポバッタン山(標高約2,830m)の2,000mポイントにマレーゼトラップ5基を約1ヵ月半設置することに成功した。今後、得られたサンプルを詳細に調べ、熱帯におけるクモヒメバチ類の分布について考察する。
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