研究課題/領域番号 |
12J02707
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高須賀 圭三 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員PD (00726028)
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キーワード | クモヒメバチ / クモ / 寄生 / 産卵行動 / 寄主操作 / 網型 |
研究概要 |
クモヒメバチ類の特異的な産卵行動様式に依拠した同所的種分化機構解明のためには、近縁種間での産卵行動の比較が重要になってくる。研究実施計画に記したように本年はZatypota属の産卵行動解明に注力した結果、2種の産卵行動を解明することができた。なかんずく、同属で唯一産卵行動のわかっているZatypota albicoxa (Takasuka, et al. 2009 ; Takasuka & Matsumoto 2011)に極めて近縁で、ニホンヒメグモを利用する(寄主クモも同属)Zatypota maculataの産卵行動解明の意義は大きい。詳細は割愛するが、本種もやはり早ホンヒメグモの網型に極めて特化した産卵行動を示し、自然淘汰の産物を目の当たりにすることができた。さらに面白いことにこの行動様式が、前出の近縁種Zatypota albicpxaのTakasuka & Matsumoto (2011) Fig. 1bに示された行動様式と酷似しており、この系は"産卵行動多型化に基づく寄主シフト仮説"のモデルとなりうる。その一方で、別属のクモを利用するZatypota baragiは艀化した初齢幼体に次々と産卵するという他のクモヒメバチでも前例のない行動が発見きれた。今後は、Zatypota属の種間系統樹を早急に作成し、これらの行動をマッピングした系統学的考察を行っていく。 また、クモヒメバチがクモ卵寄生蜂から進化する上で獲得が不可欠(Key innovation)だった外部付着能力の追求も大きな前進を見せた。宮崎勝己講師(京都大学)の協力の下、クモに寄生した状態のハチ幼虫をパラフィンに包埋し、西川幸宏准教授(京都工繊大)の協力の下、X線CTスキヤンしたところ、接着部位のX線吸光係数計算が可能となり、その構成元素に昆虫綱では滅多に使われないカルシウたの利用が示唆された。つまりハチ幼虫は、自身をクモの体表に留め置くために通常使われない丈夫なカルシウムを使って自身を鋲打ちしているかもしれない。この衝撃的な発見をさらに追及するため、目下宮崎氏と共に、よりX線CTと相性のよい樹脂包埋標本を作製したところであり、再度撮影を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発見できるかは水物である産卵行動を2種で発見できたことは大きい。また、クモヒメバチ幼虫による鋲打ち現象は非常にインパクトのある発見であり、核心に迫っていることは大きな進展である。これらに加え、クモヒメバチによる網操作現象などサイドワークも実りつつある。
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今後の研究の推進方策 |
Zatypota albicoxaの産卵行動多型が個体を反映していない傾向が見られつつあるため種内での変異を見るよりかは、種間での産卵行動および当該寄主クモの網型を比較する方向に重点を置くべきと考えている。新たにわかった産卵行動を比較考察し、種間系統樹と共に論文にまとめていく。 鋲打ち現象の解明については、樹脂包埋標本による再CTスキャンのほか、神戸大学工学部膜工学研究室の協力の下、XPS (X線光竃子分光法)による鋲部位の元素分析を予定している。
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