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2012 年度 実績報告書

遺伝子サイレンシングにおける新規スプライシング関連因子の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 12J02726
研究機関北海道大学

研究代表者

浅沼 高寛  北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC2)

キーワードヘテロクロマチン / 遺伝子サイレンシング / 脱サイレンシング / スプライシング
研究概要

本研究ではモデル生物として分裂酵母を用い、欠損するとヘテロクロマチン領域内における遺伝子サイレンシングに異常が確認される新規スプライシング関連因子Dog1の機能解析を行うことで、スプライシング様因子がヘテロクロマチンにおいてサイレンシングという機能を担う新たなメカニズムを明らかにすることを目的とする。
本年度に行なった解析で申請者は、Δdog1+の脱サイレンシングとは別の表現型として、DNA複製フォークを介して二本鎖切断を誘起するHUやCPTといったDNA損傷剤に対するrad3+(ATR kinase)欠損株の高感受性が、Δdog1+との二重欠損株において部分的に抑制されることを見出した。HUは細胞内でDNA複製フォークの不安定化を引き起こす。解析の結果、dog1+が欠損すると複製フォークが安定化するために、HUによる崩壊が起きにくくなることを示唆ずる結果が得られている。近年、出芽酵母で「転写されている遺伝子座位を核膜孔へ繋ぐ」といった遺伝子発現に関わる機構の欠損株で同様の表現型が見られることが報告されており、Δdog1+でも同じ現象が起きている可能性が極めて高い。このことは、ユークロマチン上の遺伝子発現機構で機能する因子が、ヘテロクロマチンにおいては逆に遺伝子サイレンシングという機能を担うということを意味している。
更にこの解析の過程で、Δdog1+cdc25-22二重変異体ではΔdog1+による脱サイレンシングの表現型が抑制されることを発見した。またΔdog1+cdc10-M17二重変異体では許容温度条件下で脱サイレンシングが起き、準許容温度下では抑制された。この結果は、Δdog1+による脱サイレンシングと細胞周期に何かしらの関係性があることを意味している。このような細胞周期と脱サイレンシングの関係を指摘した報告は未だ嘗てなく、全く新たな機構の解明に寄与する可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ユークロマチン上の普遍的な遺伝子発現におけるDog1^+複合体の機能解析の手がかりとして、dog1^+欠損によって複製フォークが安定化することを示唆する結果を得ることには成功しつつあるが、その実験に時間を割かれてしまい、当初の予定であったDog1複合体精製が殆ど進んでいない。しかし反面その実験過程において、当初予想していなかったΔdog1^+に見られる脱サイレンシングと細胞周期の関係性を見出したことは、今後ヘテロクロマチンにおけるDog1複合体の機能を解析していくのに非常に有力な知見となったと考えている。

今後の研究の推進方策

(1)まず来年度は上記の遅れを取り戻すべく複合体精製実験から取り組むことが必須である。
(2)Δdog1^1による複製フォーク安定化という結果を、ユークロマチン上の遺伝子発現機構におけるΔdog1^1の影響へと変換する:出芽酵母において一部の遺伝子発現機構因子の欠損株で複製フォークの安定化が報告されており、Δdog1^1においても同様に、その転写装置への影響が結果として複製装置に反映されていると考えられる。よって安定化が十分に検証された後にはその結果を手がかかりに転写装置への影響を検討し、これを元に予備的な結果を得た後はChlP-seq等を用いてゲノムワイドな解析を行なう。
(3)細胞周期と脱サイレンシングの関連性を解析し、ヘテロクロマチンにおいてDog1複合体が担う新規の機構を明らかにする。

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公開日: 2014-07-16  

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