研究概要 |
平成24年度は,山陽地方から出土した縄文人骨について,Sr同位体分析を行い,データを集めた。その結果,山陽地方の縄文人骨の中には,生前に集落間を移動した個体が少なく,その時代的変化がない可能性が高いことが明らかとなった。その内容をまとめて論文を執筆し,Journal of Anthropological Archaeologyに投稿し受理された。 これまで行ってきた縄文時代人骨の安定同位体分析の結果を,考古学研究会の雑誌である考古学研究に投稿して出版された。また,文化財行政の関係者や一般の方向けの考古学ジャーナルにも,縄文時代人骨のストロンチウム同位体分析について概説した。また,京都大学学術出版会より,大学生向けの一般書の一部を執筆した。これらの出版によって,より文系の考古学者や一般の方に私の研究の成果を公表できたと思う。 ガスベンチと質量分析装置を用いた,ハイドロキシアパタイトの炭素・酸素同位体比測定のための技術開発を行った。まず,炭素・酸素同位体比の標準物質を作成し,国際標準物質を規準とした同位体比の値付けを行った。その後,実際の歯の試料を分析して,精度良く同位体比を測定できることを確認した。平成25年度以降,縄文時代人骨の試料を分析することが可能となった。 また,本年度の研究成果は,日本人類学会,日本考古学協会,総合地球環境学研究所第2回同位体環境学シンポジウムなどで発表し,他の研究者から大きな反響があった。 以上のように,平成24年度も,研究計画どおりに研究を進め,特別研究員(PD)における1年目の研究計画を着実に実施することができた。
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