研究課題/領域番号 |
12J02775
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 修一郎 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 非ガウス性 / 宇宙大規模構造 / モードカップリング / プレヒーティング |
研究概要 |
研究課題に従い、平成24年度は、初期揺らぎの非ガウス性が与える宇宙大規模構造形成への影響の精密な定式化を中心に行った。初期揺らぎの4点相関で特徴付けられるような非ガウス性を含んだ精密な定式化は本研究が最初であり、学会での発表などを通じて他の研究者からの反応も数多く得られ、議論でき、今後の研究の発展も大いに期待できるかたちとなった。現在、発展として、これまで考えられてこなかった高次の非ガウス性が与える影響に関する研究や、銀河分布の高次相関に与える影響の精密な見積もりなどを進めている。共同研究として、インフレーション中に生成されるスカラー、ベクトル、テンソルモード揺らぎすべてを含んだ3点相関が与える観測量への影響に関する研究も行った。線形摂動の範囲では、これらのモードは互いに独立であり無相関であるが、非線形効果まで考えることでモード同士が相互作用することになる。これまでこれらのモード同士の相関に関する研究は少なく、精密な予言はなかったが我々の研究により、一般的でより精密な理論予測を行うことができる。これらは、平成23年度まで在籍していた名古屋大学の学生や東京大学の他研究室のメンバーとの共同研究である。また、初期のスカラー曲率揺らぎへのプレヒーティング機構がもたらす影響を見積もる手法についての議論も行った。プレヒーティング機構はスカラー場の非線形ダイナミクスが重要となるメカニズムであり、詳細な解析には数値計算を駆使する必要があるが、数値計算で得られたデータを観測量である初期の曲率揺らぎの解析に用いる際にはある程度の解析的なアプローチが有効である。このアプローチに言及した論文は現在審査中であり、また数値計算を駆使した、より詳細解析に関しても現在進行中で準備を進め、解析に入りつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、論文も掲載決定のものが3本、また投稿中のものが2本あり、また研究発表の場もいくつか持つことが出来たから。発表に関しては、本課題のキーワードである非ガウス性に関するレビュー講演の依頼が日本物理学会から頂けたのも研究が1頂調に進展し、自分の研究のアピールも積極的に行えた結果である。研究内容に関しても、当初の目的に沿って、非ガウス性が与える宇宙大規模構造への影響、また揺らぎの生成過程の一つとしてのプレヒーティング機構に関する研究も行えているため。さらに、以下で書くように今後の研究推進も期待できるので。
|
今後の研究の推進方策 |
上で述べたこれまでの研究を踏まえ今後の研究を発展させていく以外にも来年度以降の展望として、2013年3月のPlanck衛星の詳細な解析にもとづいた、初期宇宙モデルに対する理論研究を行っていく。例えば、このPlanck衛星の解析により大きな非ガウス性を与えるモデルは厳しく制限された一方で、さらなるモデル選別に有効な観測や新たな検証方法を吟味する時代が到来している。現在、その非ガウス性が大きくなる可能性を持つモデルの一つであったカーバトンモデルにおいて、非ガウス性が大きくならない状況においても標準的なインフレーションモデルと区別する手法の一つとして重力波観測を視野に入れた研究を進めている。また、今後詳細な観測が期待される、電波干渉計による中性水素の21cm輝線を通じた高赤方偏移宇宙での物質揺らぎの進化の解明において、初期宇宙モデルの更なる選別がどの程度可能なのかどうか議論する研究も来年度に向けて行っている。
|