研究課題/領域番号 |
12J02787
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
左近 幸村 早稲田大学, 商学学術院, 特別研究員(PD)
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キーワード | ロシア史 / 海運 / 経済史 / グローバルヒストリー / 茶 / 自由港 / 船 |
研究概要 |
平成24年度は、まず6月に拙稿「19世紀後半から20世紀初頭にかけてのロシアの茶貿易:汽船との関連を中心に」(『スラヴ研究』59号)が公刊され、世界的にもほとんど知られていない南アジアとロシアの茶貿易の実態、ならびにそれに汽船が果たした役割を明らかにすることができた。 続いて東アジア近代史学会からの依頼により、6月の同学会の大会(日本大学)において「帝政期のロシア極東における「自由貿易」の意味」と題する報告を行った。このときの報告に関連して、12月にはロシアのウラジオストクに出張して文書館、図書館で史料調査を行い、19世紀末から20世紀初頭にかけての港の発展や東アジアとの経済関係に関する現地の知事や総督の文書を閲覧することができた。これらの成果をもとに、「帝政期のロシア極東における「自由港」の意味」と題する論文を『東アジア近代史』に投稿した。この論文では、帝政期のウラジオストク港の発展の様子を描くとともに、末尾で、第一次世界大戦直前の同港の状況がオデッサを取りまく状況と類似していることを指摘した。そこで次年度は、海運を軸として、20世紀初頭のオデッサとウラジオストクの比較を試みる。 7月には南アフリカのステレンボッシュ大学で開かれたWorld Economic History Congressに参加し、本研究の構想をまとめたポスターを出品した。その結果、本ポスターは大会に出品されたもののうち3番目に優れたポスターであると閉会式で発表されるなど、高い評価を得た。 さらに本研究の主要な研究対象の一つである20世紀初頭のロシアの汽船会社、北方汽船の歴史をまとめた論文「北方汽船小史」を『ロシア史研究』に投稿し、同誌の91号に掲載された。本論文は、デンマーク資本の会社がロシアの海運の発展に果たした役割と、ロシア政府の対応も含めて考察したものである。次年度も引きつづき、ロシアの海運における外国資本の問題を研究し、ロシア帝国と世界経済の関係を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文投稿や学会報告を定期的にこなし、海運を通じたロシア帝国の統合の過程、あるいは世界経済とロシアの関係について徐々に明らかになりつつあるので。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、社会経済史学会全国大会(東京大学、6月)、Fifth East Asian Conference on Slavic Eurasian Studies(大阪経済法科大学、8月)、東京大学中東地域研究センター定例研究会(2月)での報告が予定されている。 最初のは経済史、あとの二つは地域研究に基づく研究発表の場であり、それぞれの場で本研究がどの程度通じるかを探っていく。また、夏休みや年度末を利用してモスクワなどでの現地調査を行いたいと考えている。
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