オリゴペプチドを修飾したメンブレン基板上で培養した線維芽細胞シートを、電気化学的手法に基づき培養基板から回収し、免疫不全マウスの皮下へと移植した。担体としてベスキチンを用いることで、細胞シートを容易に移植部位に運搬することが可能であった。 移植後の組織切片から、細胞シートが1~2ヶ月後においても肉様膜と真皮間に生着している様子が観察され、移植部位に留まっており、本手法により作製・回収した細胞シートの生体への高い生着性が示された。また、免疫不全モデルを用いた実験とはいえ、異種間移植において2ヶ月という経過観察期間で明らかな腫瘍化や極端な細胞浸潤は認められなかった。 移植した細胞シートの機能発現を見るために、抗コラーゲン抗体を用いて免疫染色を行った。細胞シートの内部および周辺にコラーゲン産生が認められた。つまり移植2ヶ月後においても細胞シートは移植部位に生着し続け、コラーゲン等の機能発現を有することから、移植による高い治療効果が期待できる。 また、メンブレン基板上で線維芽細胞と血管内皮細胞を共培養することによって細胞シート内に血管様構造が付与された。経時的に形態を観察した結果、3日後に内皮細胞の細かな網目構造が細胞シート内に形成され始め、1週間後にはよりはっきりと目視できる網目構造が確認できた。すなわち、細胞シート内に血管様構造を付与し、また培養と共に細胞シート内の血管網が時々刻々と変化していく様子が捉えられた。 3次元画像解析ソフトウェア(Imaris)による解析の結果、平均直径と体積は培養3~5日目にかけて減少し、7日目にかけて増加すること、一方で分岐数は培養するにつれて減少し、3~5日目にかけて半減していることが分かった。これらから、細胞シート内の血管内皮細胞は、まずシート内全体に血管様網を張り巡らせたのち、徐々に形態を変化させ、適切な立体配置や空間密度を獲得していくことが示唆された。
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