研究課題/領域番号 |
12J02855
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻野 博文 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013-03-31
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キーワード | ヘムタンパク質 / 分光学的測定 / 活性酸素種 / 一酸化窒素 |
研究概要 |
申請者は細胞保護的役割を持つと示唆されている二つのヒト6配位グロビンタンパク質の分子論的反応機構の解明を目的とし、研究計画の申請時に以下(A)~(D)の四つの項目を掲げた。 (A)分子内ジスルフィド結合を形成したNgbの結晶構造(B)Cgbの機能1:活性酸素が関わる抗がん作用 (C)Cgbの機能2:硝酸塩が関わる抗虚血作用(D)Cgbの機能3:脂質膜との関わり 本申請内容に基づき、上記の項目に関して研究に着手した結果、先行した研究成果から(B)及び(C)について大きがため1にこの二つのについてこととした。以下に詳細を記す。 (B)Cgbの機能1:活性酸素が関わる抗がん作用 申請者はヒト6配位型グロビンタンパク質であるサイトグロビン(Cgb)のシステイン残基が生理的機能に深く関わると考え、システイン残基を介したジスルフィド結合によって形成される親和性の異なる4つの多量化状態(monomer SS型、monomer SH型、dimer、tetramer)をとることについて明らかにした。また、これら多量体について蛍光試薬を用いてスーパーオキサイド消去活性について調べたところ、Cgb多量体はいずれも十分に高いスーパーオキサイド消去活性を持ち、tetramer、dimer、monomerの順に活性が上昇することを見出した。また、monomer SS型はスーパーオキサイドと反応して酸素化型となることも明らかとした。 (C)Cgbの機能2:硝酸塩が関わる抗虚血作用 上記の知見に基づき、酸素化型monomerをさらに一酸化窒素と反応させた結果、ペルオキシナイトライトが生成することを明らかにした。Cgbは活性酸素からの生体保護機能を担うと推定されていること、また、ペルオキシナイトライトは細胞生存シグナルとなり得ることから、上記の研究成果はサイトグロビンの生理的機能解明に向けた重要な知見を与えるものと判断される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は細胞保護的役割を持つと考えられているヒト6配位グロビンタンパク質の反応機構を分子論的に解明することを目的として実験を行っている。申請者はCgbがスーパーオキサイド消去能を有すること、一部多量体がペルオキシナイトライトの生産に関わることを明らかとした。スーパーオキサイド消去やペルオキシナイトライト産生が細胞保護作用と大きく関連していると考えられるため、反応機構の解明に大きく近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績で示したように、申請者はCgbがペルオキシナイトライトを産生することを見いだした。ペルオキシナイトライトは虚血時二おける細胞保護作用に関与しているとの報告があり、Cgbのin vivo実験で明らかとなっている生体に対する影響とも一致している。そこで、Cgbのもつペルオキシナイトライト産生能と細胞保護作用の関連性についてより詳細な検討を行う。具体的には、ペルオキシナイトライトもつ細胞保護作用として提案されている二つの作用(1)細胞生存シグナルの上流に存在するチロシンキナーゼレセプターのニトロ化作用、(2)チロシンキナーゼレセプターの脱リン酸化を行う酵素であるPTPaseの酸化、についてCgbが関与するかどうかを明らかにする。
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