研究概要 |
半導体量子ドット(QD)は確定的な単一光子発生が可能な非古典光源であり、その発生光子を情報のキャリア(キュビット)として利用することで、高い秘匿性を持つ量子暗号通信への応用が大いに期待されている。その実現には高効率なキュビット生成が必須であるが、研究代表者はQDを金属反射鏡で埋め込む新規構造を提案し、検討を行っている。今年度はこの構造を用いて(1)世界最高レベルの高純度な単一光子発生、(2)QDと外部光学系との結合効率の大幅な改善が確認された。 (1)高純度な単一光子を発生させるため、励起レーザ光の波長を的確に制御し、QD内で形成される1つの励起子状態を排他的に生成させ、発生光子の評価を行った。単一光子の純度は2次相関関数を測定し評価されるが、測定結果は従来の評価手法が適用できない特性を示した。そこでQD内のキャリア分布挙動を2次相関関数に取り込むことで、理論の再構築を行った。これは従来の評価手法では適用外であった状況も網羅した、より一般的な評価手法であり、学術的意義も大きい。更にこの手法を用いて測定結果を評価したところ、複数光子発生が古典光よりも11333に抑制されていることが精度良く確認された[1]。これはこれまでの報告例の中で最小レベルであり、非常に高純度な単一光子発生である。 (2)通常、半導体と空気との屈折率差により、QDと外部光学系との結合効率は~1%に留まってしまうが、独自の金属埋め込み構造を用いることで~8%まで改善することが可能である[2]。今年度は高い屈折率を持つ銀の使用、金属反射鏡の角度の最適化を行うことで更なる改善を目指した。結果として、結合効率18%~24%と大幅な改善が確認された(論文投稿中)。 以上の成果は、QDと金属埋め込み構造を組み合わせることで高純度・高効率な単一光子発生が可能であることを示唆しており、量子暗号通信への応用へ向け重要な結果である。 [1]H. Nakajima et al., APL101, 161107, (2012). [2]H. Nakajima et al, pss(c)8, 337(2011).
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