研究概要 |
平成24年度は、以下の3種について、種苗放流及び養殖が天然集団に及ぼす生態的・遺伝的影響を評価した。 1.大量に輸入・放流されている中国アサリ(仮称)は外来種で、アサリとは遺伝的・形態的に異なる。日本8カ所、中国4カ所から採集された1,200個体以上の標本の外部形態及び遺伝子データ解析から、有明海では初めに中国アサリ♂が侵入して交雑し、現在ではハイブリッド集団になっていた。本研究では、形態・遺伝子データ解析及びミトコンドリアのデータベースへの登録を担当した。 2.魚食性が極めて強いサワラについて、1999年から2005年の7月から12月に計測された5,005個体の0歳魚(内放流魚551個体)の体長と体重を解析し、サワラは近年低位で変動する環境収容量を限度まで利用しており、サワラの資源量が多い場合にはバイオマスでみて放流魚は天然魚を置き換えたことを明らかにした。遺伝子実験については、日本周辺の11海域から合計1,424個体の天然魚と香川県で生産された人工種苗230個体を収集し、ミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列(861個体)とマイクロサテライトDNA5遺伝子座(1,654個体)の遺伝子型を決定した。 3.マダイについては、愛媛県宇和海(養殖生産量第一位)から養殖魚100個体と天然魚116個体、養殖・放流が行われていない瀬戸内海東部の岡山県寄島から98個体を採集した。また、30年以上大量放流されてきた鹿児島湾から、天然魚125個体、放流魚45個体、養殖がなく放流の影響もない対照群としては、鹿児島県東シナ海側の江口から100個体を採集した。このうち、養殖魚、宇和海、寄島、江口、鹿児島湾の5標本249個体の外部形態15ヵ所を計測・解析した。遺伝子実験については、マイクロサテライトDNA5座位(575個体)の遺伝子型とミトコンドリアDNA COI領域の塩基配列(397個体)を決定した。
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