研究課題/領域番号 |
12J02953
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中里 亮太 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ミクログリア / Runx2 / ATP |
研究概要 |
本年度は、ミクログリア細胞株BV-2細胞において、細胞内シグナル分子に対する各種阻害剤を用いることで、ミクログリア細胞における細胞外高濃度ATPによる骨関連因子Runt-related transcription factor 2(Runx2)の発現上昇メカニズムの更なる解析を試みた。さらに、実際の生体内におけるミクログリア細胞においても、Runx2の発現上昇が起こる可能性について検討を行うため、脳海馬の神経細胞死を誘発することが知られているカイニン酸を投与したマウスを用いて解析を行った。 その結果、BV-2細胞において、細胞内シグナル分子に対する各種阻害剤によるRunx2発現量への影響について、RT-PCR法により解析を行ったところ、カルシニューリンの阻害剤として知られるシクロスポリンA及びFK506、さらにカルモジュリンのアンタゴニストであるW-7の添加により、高濃度ATPによるRunx2 mRNAの発現上昇が有意に抑制された。 また、カイニン酸を投与したマウスの脳より凍結切片を作成し、ミクログリア細胞におけるRunx2の発現を免疫組織化学法により検討を行ったところ、カイニン酸を投与したマウスの脳海馬では、ミクログリア細胞のマーカータンパク質である坑Iba1抗体陽性細胞のうち、坑Runx2抗体陽性細胞数の割合が増加した。 以上の結果から、ミクログリア細胞におけるRunx2の発現上昇はカルモジュリン-カルシニューリン経路の活性化を介したもの、さらにはこの反応は実際の生体内でも起こりうる反応であることが示唆された。様々な中枢神経系の疾患において、高濃度に上昇した細胞外ATPにより活性化されたミクログリア細胞が非常に重要であることが示唆されているものの、その役割や機能発現に関する細胞内メカニズムに関して、未だ十分な解析が行われていないのが現状である。本研究によるミクログリア細胞における高濃度ATPによるRunx2発現上昇メカニズムおよび機能的発現の解明は、神経変性疾患治療に新たな知見を与える可能性が考えられ、非常に意義あるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果により、研究の目的であったミクログリア細胞におけるRunx2の発現上昇メカニズムについて、その細胞内シグナル経路の大部分を明らかとすることができたこと、さらには、実際の生体内におけるミクログリア細胞においてもRunx2の発現が上昇する可能性が示唆されたことにより、研究の目的であったミクログリア細胞をターゲットとした脳疾患予防や治療というた臨床的応用性の可能性について示したことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ミクログリア細胞におけるRunx2の発現上昇メカニズムにおいて、実際にどのような転写因子がRunx2の発現調節を行っているのかを明らかとするため、Runx2プロモーター領域に対する各種転写因子の影響について検討を行っていく。さらに、このミクログリア細胞におけるRunx2が、ミクログリアの機能にどのような影響を与えるかについて、ミクログリアの機能として知られる食食能や走化性、炎症性サイトカインの放出などについて検討を行っていく。
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