研究課題
(1)OR7C1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を用いた大腸がん細胞株由来癌幹細胞に対する傷害性の検討前年度樹立したOR7C1由来抗原ペプチドを特異的に認識するCTLを用いて、大腸がん細胞株由来癌幹細胞に対する傷害性をin vivoおよびin vitroにおいて検討した。まず、in vitroにおける細胞傷害性をクロムリリースアッセイにより検討した。大腸がん細胞株SW480、HCT/5、HT29のいずれにおいても、OR7C1特異的CTLは癌幹細胞を優位に傷害した。さらに、このOR7C1特異的CTLがin vivoにおいて癌幹細胞に対し抑制効果があるか検討した。NODISCIDマウスの皮下に1×10^3個のSW480由来癌幹細胞を注入し、腫瘍径が1mm^3となったところで5×10^4個のOR7C1特異的CTLを尾静脈から輸注した。コントロール群と比較しOR7C1特異的CTL輸注群で有意に腫瘍増大が抑制された。このことから、OR7C1特異的CTLはin vivoにおいても、癌幹細胞を抑制すると考えられ、大腸癌免疫療法の標的分子として有望であることが示唆された。(2)抗OR7C1抗体による臨床検体での検討抗OR7C1ポリクローナル抗体を用いて臨床検体での免疫染色を施行した。正常組織では、精巣(精母細胞)、嗅球で陽性細胞を認めたが、正常大腸粘膜ではOR7C1陽性細胞は見られなかった。さらに、外科切除検体100例を用いて、大腸がん組織原発部位でのOR7C1の染色性を検討したところ、100例中84例でOR7C1陽性であった。また、陽性検体内での陽性細胞率による全生存率を検討したところ、高染色群(陽性細胞率50%)で有意差をもって予後不良であった。また、多変量解析でOR7C1高染色が単独の予後因子として抽出された。このことから、OR7C1は外科手術後患者において、予後不良群を抽出するバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
OR7C1特異的CTLによる大腸癌幹細胞に対する傷害性の検討は当初の計画どおり進展しており、OR7C1の大腸癌における機能の同定および臨床的意義の検討もおおむね順調に進展している。
現在までの研究でOR7C1が大腸癌幹細胞において重要な役割を果たし、免疫療法の標的分子となりうることが確認されており、今後はOR7C1以降の細胞内伝達経路をさらに検討し治療標的としての確実性を検討する。
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