研究概要 |
申請者は研究実施計画に基づき主体的に実験を行い、以下に示す様な研究成果を得た。 (1) 前年度の研究でN-89やその誘導体であるN-251の抗HCV活性に酸化ストレスへの関与が示唆された。そこで、フローサイトメークーを用いて活性酸素種(ROS)がN-89やN-251によって誘導されるかを調べた。その結果、N-89やN-251の濃度或は処理時間依存的にRosの産出が認められた。またビタミンEの併用によってROSの誘導がキャンセルされることも見出した。この結果から抗HCV活性に酸化ストレスが関与が示唆されたため、cDNAマイクロアレイを用いてmRNAレベルでの変動を調べることにより、N-89やN-251の添加によって酸化ストレスに関与しそうな遺伝子が変動をきたしていないかを調べた。その結果、N-89やN-251の添加によって様々な遺伝子が変動していたものの、酸化ストレスに関与しそうな遺伝子の変動は認められなかった, 次年度についてはN-89やN-251を長期処理することによって抵抗性クローンを樹立し、HCVと細胞側のどちらの変化が薬剤感受性に繋がるのかを研究する二とによってHCVの新規標的を同定できる可能性がある。 (2) PPARδアンタゴニストJ111, IDPO88およびLXRアンタゴニストIDPO66に強い抗HCV活性を見出した。IDP088やIDPO66を添加するとROSの産生が誘導された。抗酸化剤であるビタミンEを商濃度添加した場合はIDPO88の抗HCV活性はキャンセルされるものの、IDP066はキャンセルされなかった。以上の結果から、ROSの産生誘導は抗HCV活性の十分条件ではないことが示唆された。このような現象の原因を明らかにするために、HCVレフリコン複製細胞にJ111やIDP066を連続的に投与して耐性細胞株の樹立を試みている。 (3) 一般的に購入可能な経口サプリメントについて抗HCV活性の評価を行った結果、中国由来の漢方薬であるサナギタケに抗HCV活性を見出した。またドリンク剤とインターフェロンαやリバビリンとの併用は相加効果であり、既存の抗HCV剤との併用も可能であることがわかった。サプリメントとしてカプセル剤とドリンク剤が販売されていたが、抗HCV活性が認められたのはドリンク剤のみであった。カプセル剤については成分表が公表されていたため、抗HCV活性の可能性が高そうな化合物を探したところ、主要成分であり抗腫瘍作用も持つCordycepinに弱いながらも抗HCV活性が認められた。Cordycepinとは異なる未知の抗HCV活性成分が含まれている可能性もあることから、現在、サナギタケの抗HCV活性の作用機序について解析を進めている。 以上の研究成果は、国内の学術集会や国際学会において発表し、学術雑誌に掲載された, 来年度も継続して抗HCV活性を有する化合物の作用機序の解析と新規抗HcV剤候補の探索が必要であると考えられた。
|