iPS細胞からの心筋分化を効率化することにより、どのような細胞株でも60-70%が心筋特異的トロポニンT陽性心筋細胞に分化させることができる。この心筋分化系を用いてiPS細胞由来心筋細胞の移植治療における生着効率を測定した。初めに、細胞移植生着効率を経時的に定量化するために、発光物質(ルシフェラーゼ)を恒常的に発現するiPS細胞株を作成した。細胞数とin vivoイメージングシグナルが相関し、生着細胞数を定量的に測定できることが分かった。この細胞株を用いて心筋分化における各段階の細胞(未分化iPS細胞、中胚葉分化細胞(分化4日目)、初期心筋細胞(分化8日目)、成熟心筋細胞(分化20日目)をNOGマウスの非虚血心に直接注入したところ、未分化iPS細胞、中胚葉細胞では生着が認められなかったが、心筋分化細胞においては細胞生着が認められた。 組織所見でも移植心筋細胞が心筋細胞として生着している様子が観察された。 しかし、この実験で移植した細胞は純化された心筋細胞ではないため、分化心筋細胞自体の正確な生着能を評価することが困難であった。そこで、心筋特異的αMHCにGFPを組み込んだ細胞株を作成し、心筋純化を試みた。心筋特異的αMHC-GFP発現細胞株を作成し、その細胞株を用いることにより、心筋分化各段階において、フローサイトメトリーを用いて純化心筋を得ることができた。 そして、上に記載した発光物質を用いたin vivoイメージングシステムをこれらの細胞株にも導入することにより、純化心筋細胞の正確な生着能を評価できる実験系の確立に成功した。この実験系を用いることにより、分化心筋の移植後生着率を分化段階によって定量的に比較することができ、至適細胞を明らかにすることが期待できる。 また、生着率の違いを検討することにより、生着における重要因子の抽出も検討することができる。
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