研究概要 |
前年度に確立したルシフェラーゼ発現iPS細胞を用いたin vivoイメージングを使用し、心筋分化における各段階の心筋細胞を実際に健常NOGマウス心臓に移植し、至適細胞の検討を行った。1まず、未分化ips細胞移植を行ったところ、シグナルは数日で消失した。また、分化4日目の中胚葉前駆細胞を移植したところ、同様に数日でシグナルは消失した。それに対し、分化8,20,30日目純化心筋を移植すると、数日でシグナルが一旦減少するも、その後増加に転じ、21-3か月後にもシグナルを確認することができた。さらに詳細に検討したところ、分化8日目心筋は移植後数日でシグナルが20%程度にまで低下するのに対し、分化20,30日目心筋は40-50%程度の低下に留まった。分化&20,30日心筋すべてにおいて移植後1週間後あたりからシグナルが増加したが、この現象は分化20日目心筋で最も著明であり、2か月まで観察したところ、分化18,30日目心筋に比べ、分化20日目心筋で有意にシグナル増加、すなわち生着率が高値であった。このことより、生着心筋細胞が増殖していることが示唆された。もちろん、2か月の段階での組織染色では、十分なサルコメア構造を持つ生着心筋が観察でき、移植細胞が心筋としてマウス心臓に生着していることを確認できた。また、生着心筋と周囲のマウス心筋の間にはコネキシン43の発現も見られ、移植心筋とマウス心筋の電気的交流が存在することが示唆された。以上より、分化20日目心筋が細胞移植における至適細胞であり、生着後に増殖する可能性があることが示された。今後、実際の虚血障害心臓における生着の変化、治療効果などを詳細に観察する予定である。
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