研究課題/領域番号 |
12J02974
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
築山 宏樹 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 政治過程 / 立法過程 / 日本政治 / 地方政治 / 地方議会 / 熟議民主主義 |
研究概要 |
平成25年度は、1、地方政府の立法過程に関するデータベースの更新と、2、地方議員の立法活動の規定要因、および、3、地方政府の立法的生産性の規定要因に関する実証研究を遂行した。まず、1、地方政府の立法過程に関するデータベースについては、前年度に整備した1967年から2006年までの40年度にわたる47都道府県議会のパネルデータに、同期間に都道府県議会に提出されたすべての議員提出条例案をデータ化する更新作業を行った。その上で、そのようなデータベースに基づき、2、地方議員の議案提出行動の規定要因と、3、地方政府(執行機関)の立法的生産性の規定要因について分析を行った。2、については、2013年度の日本政治学会においてポスター発表を行った後、改訂を経て、査読付き学術誌へと投稿している。また、3、については、2013年度の公共選択学会においてポスター発表を行い、同年度の公共選択学会「公共選択のフロンティア」優秀報告賞を受賞している。 1、本研究の提出するデータベースが、既存研究に類例のない包括的な内容のものであることは、前年度の研究実績の概要に記した通りであるが、都道府県議会を単位としたデータだけでなく、議員提出条例案の個別データを新たに収集することで、地方議員の議案提出行動を会派別に分析するなどミクロな意思決定問題を研究することも可能となった。そのようなデータの新規性を背景に、2、地方議員の立法活動の規定要因を分析した論考や、3、地方政府の立法的生産性を分析した論考は、首長に強い権限を与える二元代表制下や、集権的な中央地方関係下における、地方政府や地方議会の立法活動のメカニズムを実証化するもので、比較議会研究および地方政治研究の発展に大きく貢献するものである。また、同時に、熟議民主主義研究の観点では、議会の審議活動の活性化に関して、議事運営制度の重要性を強調する研究を進めていることを付記したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
地方政府の立法過程に関するデータベースの一層の拡充によって、当初の想定より詳細に分け入った実証分析が可能となった。その研究成果は、二本の学会発表を経て、一本は査読付き学術誌へ投稿中であり、一本は学会報告賞を受賞するなどの一定の評価を得た。このことから、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
構築したデータベースに基づくテンタティブな分析から、いくつかの小規模なリサーチクエスションについて、実証分析上、考慮されるべき問題点が見つかった。具体的には、興味のある従属変数と独立変数との間に、内生性が存在する場合の対応である。たとえば、地方議会の会派構成と議事運営のあり方とのあいだには、双方向の因果関係が想定され、実証分析上の考慮が必要になる。今後は、そのような内生性を考慮した統計手法を活用するなどの対応策を講じる予定である。
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