研究課題/領域番号 |
12J02976
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山岸 祐介 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 二次木部 / ポプラ / 管状要素 / ブラシノライド / in vitro / 培養細胞 / 微小管 / 二次壁 |
研究概要 |
本研究の目的は二次木部細胞壁形成における細胞骨格のはたらきの解明であり、本年度はin vitroで二次木部の管状要素の特徴をもつ細胞へと分化させる新たなモデル実験系の開発および蛍光タンパク導入培養細胞を用いての、管状要素分化過程における微小管の経時観察を行った。 交雑ポプラ(Populus sieboldii×P.grandidentata)培養細胞から誘導される管状要素様の細胞の詳細な形態観察および細胞全体における分化率の解析を行った。ブラシノライドを低濃度で含む培地で培養した場合に最も高い管状要素面積率(15.8±6.3%)が得られた。また分化開始時点から10日目までは0%であった管状要素面積率が、12日目には1.3%、18日目には9.8%、28日目には11.5%と推移したことから未分化の細胞から管状要素様の細胞への分化は、誘導開始から約10日以降に開始し、2週から3週の期間に最も活発に起こる事が明らかになった。共焦点走査レーザ顕微鏡を用いた観察の結果、誘導された管状要素様の細胞には有縁壁孔や広い面積での二次壁肥厚といった二次木部の管状要素の特徴が観察された。このような二次木部の管状要素の特徴を持つ細胞は誘導された全ての管状要素様細胞のうち7割以上を占めた。二次木部管状要素の分化過程と二次壁の形成過程を解析するための新たなモデル系が確立されたといえる。 また蛍光タンパク(GFP,RFP)と微小管結合タンパク質の融合タンパクの発現させた形質転換ポプラ培養細胞を作出することで、ポプラ培養細胞における細胞骨格の可視化を行い、微小管、アクチンの配向局在を生細胞で観察することが可能になり、上記の管状要素誘導条件下でも細胞の表層微小管を観察できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、二次木部管状要素のin vitro誘導系の確立および二次木部管状要素の形成過程における細胞骨格の詳細な観察を行う。本年度は培養細胞が二次木部管状要素へと分化する条件を確立したことで、二次木部管状要素形成の過程を顕微鏡下で直接かつ長期にわたって観察することが可能になっており、細胞骨格の変化を長期にわたって観察する足がかりが出来たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
管状要素分化過程における細胞骨格の配向局在変化の経時観察を行う。そのために(1)共焦点顕微鏡観察下での培養細胞の長期観察方法の確立、(2)二次木部管状要素誘導系の誘導率の更なる向上が課題としてあげられる。 (1)に対しては細胞の移植法の検討や、周囲の温度調整によって細胞に刺激を与えない工夫を行なう。また。(2)については、培地成分(糖、無機塩類、植物成長調節物質等)の改変を行なっていく予定である。
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