研究概要 |
本研究は, 静止軌道領域における破砕由来デブリの空間分布の把握状況の改善を目指している. デブリの空間分布の把握は, デブリの脅威を長期的に抑制する上で根本となる取り組みである上に, 運用中の宇宙機がデブリとの超高速衝突によって破砕することを防ぐ上でも必要不可欠な取り組みである. 平成25年度の研究においては, 静止軌道の未知デブリ環境の解明をテーマとして, (1)複数の破砕事象の規模の同時推定方法の確立と, (2)未確認破砕事象の発生真偽の実観測による検証, に取組んだ. 目標(1)については, 前年度に確立した確率論的起源同定方法とそれに基づく破砕規模推定方法を統合・ルーチン化することで, 繰り返し計算によって複数の破砕事象の破砕規模を同時に推定していくことが可能であることを明らかにした. 目標(2)については, 破砕を経験した可能性が指摘されている国際識別番号1967-066Gのロケット上段機体由来の未知デブリを, 昨年度確立した軌道異常をモデリングに反映した観測計画立案手法を用いることで, 実観測により探索した. 実観測で検出された未知デブリの起源を評価した結果, 1967-066Gの破砕を仮定した場合に運動ベクトルや軌道面の特徴において破砕と関連性のある物体が2個あることが分かった. 関連性のある未知デブリの個数が非常に少なかったことから, 1967-066Gは非常に小規模の破砕を経験した可能性があることが結果として得られた. その証拠を裏付けるべく, 1968-081Eや1967-066Gを含む5機の同型機体で軌道異常を経験しているものをピックアップし, 軌道異常前後で対象物体の面積質量比パラメータに生じた変化を最尤推定法により評価した. その結果, 1967-066Gは1968-081Eと他3機とは異なる変化を経験していることから, 既に調査した1968-081Eとは破砕モードが異なることが推測された.
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